海神別荘

海神別荘：泉鏡花による戯曲

『海神別荘』（かいじんべっそう）は、日本の文豪・泉鏡花が手がけた戯曲で、1914年に雑誌『中央公論』で初めて発表されました。この作品は、独特の幻想的な世界観と、主題に現れる人間の深い感情が特徴で、多くの人々に愛され続けています。

あらすじ

物語は、現代（実際には大正初期に執筆されたため、大正時代が背景です）を舞台に展開されます。一人の美しい女性が、海神の世継ぎである公子の妻として神に捧げられる運命を背負って、海の別荘に送り込まれます。彼女はその美しさゆえに選ばれ、人柱として捧げられるという極めて厳しい運命を受け入れなければなりません。

しかし、別荘にいる彼女は故郷を思い出し、悲しみに暮れます。そして、ついには公子の制止を振り切って陸へと戻ることを決意します。ところが、陸に戻った彼女は驚くべき現実に直面します。すでに彼女は蛇の姿となっており、故郷の人々や家族からも見分けられなくなっています。彼女は彼らの前で泣き続け、別荘へと帰らざるを得ません。

彼女の涙は、複雑な感情を象徴しており、公子に対する恨みが増していきます。公子もまた、彼女の絶望を受け止め切れず、激しい怒りを覚え、その感情が高まるとともに衝突が生まれます。しかし、最終的には和解へと進展し、二人は見事に結びつくのです。この結末は、愛と運命の狭間で揺れ動く人間性を描写しており、観る者に深い印象を与えます。

舞台化

『海神別荘』は、1955年に歌舞伎座で新派として初めて舞台化されました。その後、名優たちによる再演が相次ぎ、特に芥川比呂志や坂東玉三郎など、泉鏡花の作品に情熱を注ぐ演劇人たちによって演じられています。特に、玉三郎は市川海老蔵（11代目）との共演が多く、この『海神別荘』を含むいくつかの作品を、泉鏡花の三部作として位置付け、頻繁に上演しています。

作品書誌

本作は、さまざまな形での書籍としても刊行されています。以下は、重要な書籍の一部です：

• - 『鏡花全集第26巻　戯曲』（岩波書店）ISBN 978-4000911061
• - 『鏡花小説・戯曲選 第11巻』（岩波書店）ISBN 978-4000906012
• - 『泉鏡花集成〈7〉』（種村季弘編、ちくま文庫）ISBN 978-4480031778
• - 『鏡花幻想譚〈5〉天守物語の巻』（河出書房新社）ISBN 978-4309706955
• - 『海神別荘－他二篇（山吹・多神教）』（岩波文庫）ISBN 978-4003127155

関連項目

また、本作は異類婚姻譚というテーマにも関連があります。このテーマは、異なる存在の者同士が結ばれるという物語要素をもとに、人間の孤独や愛の本質を深く探求するものです。

外部リンク

• - 海神別荘：青空文庫
• - 華 成田屋 海神別荘 - ウェイバックマシン

もう一度検索