海賊盤

海賊盤とは

海賊盤とは、著作権者に無断で製造・販売される音楽商品のことを指します。特にレコードやCDなどの音楽メディアを指すことが多く、日本の音楽業界で使われる独自の表現です。一般的には「ブートレグ」という言葉でも知られています。

海賊盤は、本来は著作権を持つアーティストやレコード会社が販売するものではないため、違法な商品です。しかし、その歴史は古く、1960年代後半から、アーティストの未発表音源やライブ音源を収録したものが、アンダーグラウンドな市場で流通するようになりました。

海賊盤の種類

海賊盤には、以下のような種類があります。

ライブ盤: コンサートの模様を録音したものです。初期の海賊盤は、オーディエンスが個人的に録音したものが多かったですが、近年ではプロの業者が高音質で録音したものも出回っています。
未発表音源: アーティストが正式にリリースしていない曲やデモ音源などを収録したものです。
編集盤: 複数の音源を編集して収録したものです。海賊盤業者によって、独自の選曲や編集が施されることがあります。
コピー盤: 正規のレコードやCDを複製したものです。品質は正規盤に劣りますが、価格が安いため、一部のファンに人気があります。

また、海賊盤の中には、アーティストの模倣演奏や歌唱を収録した「コピーキャット」と呼ばれるものも存在します。これは、海賊盤の中でも特に悪質なケースとされています。

法的取締りの現状

多くの国で、海賊盤の製造・販売は違法行為として処罰の対象となります。日本では、著作権法や商標法、不正競争防止法などにより、海賊盤の取り締まりが可能です。しかし、実際には、特に洋楽の海賊盤に関しては、取り締まられるケースは少ないのが現状です。

1990年代には、東京・西新宿の海賊盤取り扱い店が摘発された事例がありましたが、それ以降、大規模な摘発はほとんど行われていません。これは、海賊盤業者が巧妙に活動していることや、取り締まりが難しいことが理由として挙げられます。ただし、法的にはいつでも取り締まりが可能であり、今後はより厳しく取り締まられる可能性もあります。

海外では、日本よりも厳しく海賊盤を取り締まっている国もあります。特にアメリカでは、海賊盤を店頭に置くだけで処罰の対象となるため、海賊盤業者は活動しにくい状況にあります。

また、海賊盤を購入する行為自体は、2010年時点の著作権法では違法ではありません。しかし、民事上の請求をされる可能性があり、損害賠償や破棄命令を受けることがあります。海賊盤を輸入する場合には、税関で発見された場合、没収・破棄されることがあります。

海賊盤の歴史

海賊盤の起源は、個人がコンサートを秘密裏に録音し、仲間内で共有していたことにあるとされています。1969年、ボブ・ディランの未発表曲集を収録したレコード「The Great White Wonder」が発売され、大ヒットしたことで、海賊盤は一般的に知られるようになりました。

その後、ローリング・ストーンズやビートルズなどの人気アーティストの海賊盤が次々と発売され、海賊盤市場は急速に拡大しました。2000年代以降、実店舗は減少傾向にありますが、インターネットを通じて販売される海賊盤も存在し、アンダーグラウンドなファンに支持されています。

海賊盤の種類

海賊盤には、様々なアーティストのものが存在します。以下に、代表的な例を挙げます。

BOØWY: ライブ音源やデモ音源が多数出回っています。
X JAPAN: 高校生時代のライブ音源など、コンスタントに海賊盤が出回っています。
ビーチ・ボーイズ: 未発表アルバム「スマイル」の音源が人気です。
ジェフ・ベック: ベック・ボガート・アンド・アピス(BBA)の幻のセカンドアルバムの音源が有名です。
エリック・クラプトン: デレク・アンド・ザ・ドミノスのセカンドアルバムの未発表曲が人気です。
ビートルズ: 『GET BACK SESSIONS』は定番の音源です。
ジョン・レノン: 『THE LOST LENNON TAPES』は人気の音源です。
ローリング・ストーンズ: 様々な時期の未発表曲集があります。

媒体の変化

海賊盤は、アナログレコードからCD、DVDへと媒体を変えながら、現在に至っています。アナログレコードの時代には、アメリカでプレスされたものが主流でしたが、CD時代になると、日本製の海賊CDが注目を集めるようになりました。

CD化に際しては、レコード時代にはありえなかった高音質のライブ音源やリハーサル音源が登場しました。これは、ミュージシャン側のスタッフやスタジオ関係者が、海賊盤業者に音源を漏らしている可能性を示唆しています。

近年では、インターネットを通じて海賊盤を入手することも容易になりました。ファンが録音したライブ音源を、業者がBitTorrentなどで入手して販売するケースも増えています。また、個人でもCDを製造することが容易になったため、CD-RやDVD-Rでの販売も多くなっています。

海賊盤対策

海賊盤の違法リリースに対抗するため、ミュージシャンも様々な対策を講じています。

放送用音源の公式リリース: かつてBBCなどで放送された音源を、正式なCDとしてリリースする動きがあります。
公式海賊盤: 海賊盤対策として、ミュージシャン自身が公式にリリースするケースもあります。
* ミュージシャンによる海賊盤入手: 海賊盤マニアのミュージシャンが、自身の海賊盤を買い集め、未発表音源の市場調査を行うケースもあります。レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジは、西新宿の海賊盤店で自分のバンドの海賊CDを買い占めたという逸話があります。

まとめ

海賊盤は、著作権を侵害する違法な商品ですが、その歴史は長く、多くのファンに支持されてきました。しかし、近年では、法的取り締まりやミュージシャンによる対策が進み、海賊盤市場は縮小傾向にあります。今後は、より一層の著作権保護が進み、海賊盤が撲滅されることが期待されます。

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