海軍暗号書D

海軍暗号書Dの概要

海軍暗号書Dは、日本の海軍が1939年6月に導入した5桁の乱数字暗号です。この暗号は、発信用と受信用の二冊から成り立っています。暗号書には、2万5000語にわたる言語が記載されており、各語には異なる5桁の数字が割り当てられています。追加として「乱数表」が添付され、この表を用いて得られた5桁の数字に対して非算術的加算を行い、その結果をモールス符号として送信します。

この暗号書には、用途に応じたさまざまな種類が存在し、「戦略常務用」「戦術用」「情報用」「部外共用」「略語及び呼出符号」などが含まれます。特に、「戦略常務用」の中には高級司令部用の「暗号書甲」や、軍需補給用の「暗号書辛」が存在しますが、これらはほとんど使用されませんでした。対照的に、「暗号書D」は広く採用され、重要な通信を守るために多く利用されました。

暗号の更新

日本海軍は、海軍暗号書Dの原版を使用開始した1939年6月から、1940年12月1日に改編を行いました。改編された内容では、「一般乱数表第五号」がそのまま使用され、1941年1月31日まで続けられました。以降、1941年2月から7月31日までは「一般乱数表第六号」、その後は1941年8月から12月3日まで「一般乱数表第七号」が引き続き使用されました。この暗号のもとでの電文例として「新高山登レ一二〇八」があります。

さらには、開戦4日前の1941年12月4日から1942年5月27日まで、6ヶ月近く「一般乱数表第八号」が使用されていましたが、この期間においてこの暗号が解読されていたため、ミッドウェー作戦の準備に関わる重要な電文が米軍に漏洩したとされています。

1942年5月28日からは「海軍暗号書D壱」と「一般乱数表第九号」が導入される予定でしたが、対米開戦以降、急激に拡大する作戦地域により配布が遅延しました。この遅れが直後のミッドウェー海戦での日本海軍の敗北に繋がったとも言われています。軍令部は暗号が解読されたという報告を否定しましたが、この敗北を受けて暗号書の更新が行われることとなりました。

暗号事故

1942年1月、米軍は日本の伊号124潜水艦を撃沈し、そこから暗号書が引き揚げられたという情報があります。このため、暗号解読の効率が大幅に向上したという報告もありますが、現在のところ、米豪海軍がその暗号書を回収したという事実は確認されていません。

1942年12月以降は、全隊が呂暗号書に移行し、D暗号が解読された可能性に対処することが狙いでした。しかし、ミッドウェー海戦の際に重巡洋艦「三隈」がそのまま放置されたため、その状況を確認する者がいなかったとの見解が存在します。ガダルカナル島撤収作戦においては、米軍に気付かれることなく成功した事例もあり、この時点で日本軍の暗号が全て解読されていたわけではないことが伺えます。

脚注・関連項目

• - 暗号の歴史について
• - 日本の機械式暗号に関する情報
• - 海軍情報局の活動

このように、海軍暗号書Dは、日本の海軍において重要な位置を占めており、その運用と改編は戦局に大きな影響を与えました。

もう一度検索