海軍検査・調査委員会

海軍検査・調査委員会（INSURV）

アメリカ合衆国海軍における海軍検査・調査委員会（Board of Inspection and Survey、略称INSURV）は、海軍艦船がその本来の任務を完全に遂行できる状態にあるかを、独立した立場から厳格に検査・評価することを目的とする組織です。その役割は、一般の船舶における船級協会に相当するとも言えます。特に、新造艦が実際に運用を開始する前には、必ずINSURVによる評価を受け、その作戦適合性が認証されなければなりません。本部はバージニア州のリトルクリーク海軍両用戦基地に置かれています。

組織の歴史

海軍検査・調査委員会の設置は、アメリカ連邦議会が海軍に対し、高い信頼性を維持しつつ、迅速に長期的な海上任務に投入できる状態を確保するためでした。最初の組織は1868年にファラガット提督の指揮下に設けられ、1877年にはポーター提督の下で再編されました。組織の権威を確立したのは、1882年8月5日に連邦議会が法律を制定し、委員会に法的権限を付与したことです。以来、INSURVはこの法的な根拠に基づいて活動を続けています。
その活動の重要性を示す事例として、2008年には複数の主要艦艇（スタウト、チョーシン、ニューオーリンズなど計6隻）がINSURVの検査に不合格となり、さらに20隻以上に重大な欠陥が見つかりました。通常は検査結果が公表される慣例でしたが、この時は海軍によって報告書が機密指定されました。この措置に対し、2009年4月にはジム・ウェッブ上院議員が上院軍事委員会での調査を提言し、ロブ・ウィットマン委員長も議会の監査権能を妨げる可能性に懸念を示すなど、その透明性を巡って議論を呼びました。

検査・評価プロセス

INSURVは、海軍艦船の作戦即応態勢を維持するため、定期的な検査を実施します。通常、各艦船に対して60ヶ月（5年）を超えない間隔で検査チームが派遣されます。この検査では、艦船の各種機器やシステムが広範囲にチェックされ、戦闘行動や作戦行動に十分に耐えうる状態にあるかどうかが包括的に評価されます。
特に重要なのは新造艦に対する評価です。米海軍へ引き渡された新造艦は、正式な就役と作戦任務への投入に先立ち、必ずINSURVチームによる厳格な評価を受け、作戦適合性の認証を得なければなりません。もし不適合と判断された場合は、不備を改修し、改めて認証を得るまで運用状態に入れません。

主要な任務内容

海軍検査・調査委員会委員長（PRESINSURV）は、海軍長官および海軍作戦部長（CNO）の代理として、以下のような広範な任務を遂行します。

法規制や契約に基づき、試験や検査に関する計画立案とCNO方針決定への協力。
作戦適合性判定のため、定期的に艦船に乗艦して調査。
艦船重要部分の検査を通じ、作戦任務への準備状況を評価。
新造艦艇の受領時に、独立した立場から能力・性能が満たされているか確認。保証期間中の製造者責任箇所の判定。
検査結果を適時・正確に、関係する上級機関へ報告し、必要な改善策を提言。
環境保護・労働安全衛生（NAVOSH）関連検査の監督（非作戦期間中に36ヶ月以内で実施）。
* 検査データや重大欠陥分析に基づき、海軍上層部へ情報提供。

INSURVの活動は、米海軍の艦隊全体の信頼性と即応態勢を支える重要な柱となっています。

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