海軍潜水学校

海軍潜水学校について

海軍潜水学校は、大日本帝国海軍において潜水艦乗組員を育成するための専門教育機関でした。他の術科学校とは異なり、呉鎮守府の管轄下に置かれていたため、地理的にも他の学校とは離れた場所に位置していました。この特殊な環境は、対潜水艦戦を専門とする対潜学校との交流をほとんど持たないという、独特な教育体制を形成する要因となりました。

創設と初期の活動

日本海軍が初めて潜水艇を導入したのは1905年のことです。当初は横須賀水雷団で運用を開始しましたが、艇が小型であったため、十分な洋上訓練を行うことができませんでした。そのため、導入からわずか1年後には横須賀での運用を断念し、所属していたすべての潜水艇を呉軍港に移転しました。この出来事がきっかけとなり、潜水艦の操艦実習は呉で実施することが慣例となりました。

当初は、潜水艦母艇を繋留して校舎として使用していましたが、潜水艦に関わる人員が増加したため、1920年に校舎を建設し、正式に開校しました。

教育課程

他の術科学校と同様に、潜水学校でも普通科、高等科、専攻科、特修科の4つのコースが設けられました。その後、潜水艦長を養成するための甲種コースが特別に設置されました。すべてのコースは、兵科と機関科の二本立てで実施され、特に機関科では、水上艦にはないディーゼルエンジンとバッテリーの操作が重視されました。しかし、機関長の養成コースは設置されず、高等科の修了をもって教育は完了とされました。

太平洋戦争中の変化

太平洋戦争後半になると、潜水学校の環境は大きく変化しました。まず、校舎を大竹市に移転し、老朽化した潜水艦を実習船として活用する「呉潜水戦隊」が編成されました。潜水学校長が司令官を兼任しました。潜水艦作戦が行き詰まり、特攻作戦が本格的に計画されるようになると、柳井市に「特殊潜航艇」の訓練を専門とする柳井分校を設置しました。

さらに1945年春からは、爆撃機による瀬戸内海の機雷封鎖作戦が開始され、大竹での実習が困難になったため、穴水町に七尾分校を立ち上げ、七尾湾での実習を試みました。しかし、1945年9月15日、潜水学校は閉校となりました。

沿革

1920年9月30日：呉に潜水学校が開校
1942年11月23日：大竹に移転
1943年12月1日：呉潜水戦隊を編成、潜水学校実習部隊として位置づけ
1944年4月1日：柳井分校を設置、特攻兵器訓練を開始
1945年4月1日：七尾分校を設置、疎開移転
1945年9月15日：閉校

歴代潜水学校長

（心得）今泉哲太郎 大佐：1920年9月15日 -
福田貞助 少将：1921年12月1日 -
吉川安平 少将：1922年2月1日 -
宮治民三郎 少将：1922年12月1日 - 1923年10月1日
（心得）中城虎意 大佐：1923年10月1日 -
岸井孝一 少将：1924年12月1日 - 1925年12月1日
重岡信治郎 大佐：1925年12月1日 -
尾本知 大佐：1926年12月1日 -
野辺田重興 大佐：1928年12月10日 -
重岡信治郎 少将：1930年12月1日 -
嶋田繁太郎 少将：1931年12月1日 -
北川清 大佐：1932年2月2日 -
植松練磨 少将：1932年6月28日 -
野村直邦 大佐：1933年11月15日 -
和波豊一 少将：1934年11月15日 -
浮田秀彦 大佐：1935年11月15日 -
小松輝久 少将：1937年12月1日 -
熊岡譲 少将：1938年11月15日 -
高須三二郎 少将：1939年11月15日 -
樋口修一郎 少将：1941年7月5日 -
山崎重暉 少将：1943年9月15日 -
醍醐忠重 中将：1944年8月23日 -
* 市岡寿 中将：1945年5月1日 - 1945年9月15日閉校


海軍潜水学校は、その創設から閉校まで、潜水艦戦力育成に重要な役割を果たしました。戦局の悪化と共に訓練場所を移動するなど、厳しい状況下でも教育を継続し、多くの潜水艦乗組員を育成しました。

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