小松輝久

小松輝久：皇族から海軍軍人へ、そして戦犯としての一生

小松輝久は、1888年（明治21年）に北白川宮能久親王の四男として生まれました。北白川宮家は、皇室の中でも格式の高い家系です。輝久王は、皇族として特権的な立場にありながらも、それを拒否し、自ら努力を重ねて海軍の道を歩むことを選びました。

海軍兵学校への入学と皇族としての異例な選択

当時の皇族は、天皇の許可があれば、陸軍士官学校や海軍兵学校に無試験で入学することができました。しかし、輝久王は、自ら一般受験を選び、海軍兵学校第37期に入校しました。入学時の席次は122番（または166番）と、決して上位ではありませんでしたが、これは皇族として類を見ない決断でした。同期には、後に海軍大将となる井上成美や、多くの海軍中将らがいました。

輝久王の海軍兵学校入学は、母親である能久親王妃富子の強い要請によるものとされています。海軍側も当初は難色を示したものの、輝久王の強い意志と母親の熱意によって、最終的に一般試験での入学が認められました。卒業時の成績は26番で、皇族であれば首席となるのが通常でしたが、輝久王は特別扱いを受けずに卒業しました。

臣籍降下と小松侯爵家の創設

1910年（明治43年）、輝久王は臣籍降下し、小松姓を賜り、侯爵に叙せられました。これにより、小松宮彰仁親王の死後、断絶していた小松宮家の祭祀を承継することとなりました。臣籍降下は、当時非常に稀なことであり、その運用基準も明確ではありませんでした。

海軍軍人としての輝かしい経歴

海軍兵学校卒業後、輝久王は終戦間際まで海軍軍人として活躍しました。戦艦「金剛」や「山城」の分隊長を務め、1921年（大正10年）には、皇太子裕仁親王（後の昭和天皇）のヨーロッパ歴訪に同行しました。この際には、香港における政情不安を受け、皇太子の身代わりとして小松大尉が車上に座っていたという逸話も伝えられています。

その後も、軍令部参謀、海軍大学校など、教育畑でも手腕を発揮しました。階級も着実に昇進し、少佐、中佐、大佐、少将、中将と、海軍の要職を歴任していきました。

戦後とBC級戦犯

終戦後、小松輝久は、旧皇族の中では唯一、戦犯として実刑判決を受け、服役しました。これは、彼が第六艦隊司令長官を務めていたことが大きな要因でした。出所後は、平安神宮宮司を務め、その人生の幕を閉じました。

小松輝久の生涯：まとめ

小松輝久は、皇族としての特権を放棄し、自らの意志で海軍軍人の道を歩んだ、類まれな人物でした。厳しい軍務、そして戦犯としての服役という、波乱万丈の人生を送りましたが、その生涯は、日本の近代史を象徴する出来事として、後世に語り継がれることでしょう。彼の行動は、皇族という枠にとらわれない、強い意志と信念を示しています。また、戦後の彼の行動は、その複雑な時代背景の中で、新たな人生を切り開こうとする彼の強い意志を反映していると言えるでしょう。彼の生涯は、現代社会においても、多くの示唆を与えてくれるものです。

年譜

(本文に記載の年譜は、簡潔な記述のため、本セクションでは省略します。)

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