海龍 (潜水艇)

海龍（かいりゅう）について

海龍は、大日本帝国海軍によって開発された特殊潜航艇であり、敵艦に対する攻撃を行うための水中特攻兵器です。二人乗りのこの潜航艇は、敵に魚雷を発射したり、体当たりすることでダメージを与えることを想定して設計されました。海軍工作学校の浅野卯一郎中佐の発案により、開発が進められましたが、その過程では機密を守るため「SS金物」という名称が付けられました。

開発の経緯

海龍の開発は、特攻兵器として本土決戦のために行われました。戦争の混乱の中で、横須賀海軍工廠などで製造が進められ、終戦までに224隻が建造されましたが、そのほとんどは完成していませんでした。この潜航艇は、通常の潜水艦とは異なり翼を持つため、飛行機のように上下の運動を行うことが可能で、その構造はシンプルで迅速な建造が可能でした。

設計と機能

海龍の設計は、機体内に直径45cmの魚雷を2本収納できる射出筒を備え、発射スイッチによって魚雷を敵艦に向けて発射する仕組みでした。しかし量産が進むに連れて、射出筒の装着が間に合わなくなり、艇首に600kgの爆薬を装備する方針へと変更されました。海龍の操作は、他の潜水艇と比較して簡易で、少ない乗員で運用可能でした。

量産と実戦投入

1945年3月、海龍は三浦半島の油壺に基地が設けられ、急速に量産が進みました。しかし、海龍は敵艦隊に対する攻撃のための特攻兵器として活用される予定でしたが、大戦が終結してしまったため、大規模な実戦投入は実現できませんでした。実際には、訓練のみを行う段階であり、戦況の悪化により、搭乗員は十分な訓練を受けることが難しかったと推測されます。

戦役での動き

海龍は多くの実戦機会を得られず、その戦術は限られたものでした。夜間に基地を出発し、敵艦隊に接近して攻撃を試みるというものでしたが、海龍の速度と戦術上の制約から、敵艦に対する威力の発揮は困難でした。訓練中には、魚雷が目標に命中した例もありましたが、実際の戦闘においては、難しい局面が多く、敵の探知に対するリスクも高かったと考えられています。

最後に

大日本帝国海軍の海龍は、特攻兵器としての特異な役割を持っていたものの、その実際の運用には限界がありました。戦後、アメリカ軍によって多くの海龍が鹵獲され、秘匿された基地や工場も発見され、写真が残されていますが、実戦の成績は期待されたほどではなかったようです。海龍の設計や量産における問題点から、戦況の中での活用が難しかったことは明らかです。

もう一度検索