消えた花嫁

『ドクター・フー』スペシャルエピソード「消えた花嫁」：詳細解説

『ドクター・フー』シリーズのクリスマススペシャルとして2006年12月25日に放送された「消えた花嫁」（原題：The Runaway Bride）は、デイヴィッド・テナント演じる10代目ドクターと、キャサリン・テイト演じるドナ・ノーブルの活躍を描くエピソードです。ロンドンを舞台に、地球の核に眠るラクノスの子供たちを目覚めさせようと企む、異星人ラクノスの女王とその手下ランスとの戦いが繰り広げられます。

物語のあらすじ

本作では、ランスがドナにヒューオン粒子を飲ませ、エネルギー源として利用しようとする計画が中心となります。ドクターは、ドナの婚約者であるランスの異常な行動に気づき、事態の解決に乗り出します。ドナは、ドクターと共に、想像を絶する冒険に巻き込まれていきます。ラクノスの女王の目的、そしてドナの運命は？ハラハラドキドキの展開が、クリスマスの雰囲気の中で繰り広げられます。

制作秘話

このエピソードは、シリーズ制作者ラッセル・T・デイヴィスが初期から構想していたもので、当初は第2シリーズでの放送が予定されていました。しかし、ビリー・パイパーの降板と、2本のクリスマススペシャルの制作決定を受け、本作がクリスマススペシャルとして放送されることになりました。

制作過程では、様々な工夫が凝らされました。例えば、自動販売機から大量の紙幣が飛び出すシーンでは、偽札を使用。10ポンド札にはドクターの顔とユーモラスなメッセージ、20ポンド札にはプロデューサーの顔と、過去のエピソードからの引用が印刷されていました。また、撮影スケジュールの都合で、キャサリン・テイトが台本の読み合わせに参加できなかったため、代役が務めたというエピソードも残っています。放送時にはカットされたシーンもあり、ドクターの行動や感情表現に関して、当初の構想と異なる部分も存在します。さらに、ターディスのロンドンでの追跡シーンは、チャリティコンサートの会場で撮影されました。

キャスティング

ラクノス女王役のサラ・パリッシュは、以前からデイヴィッド・テナントと共演経験があり、ドナ役のキャサリン・テイトも、デイヴィッド・テナントとコミックリリーフの寸劇で共演していました。ドナは第4シリーズでレギュラーコンパニオンとして再登場しますが、本作で初登場する他のキャラクターも、シリーズの後のエピソードに繋がる伏線を秘めています。残念ながら、当初はシリーズに登場予定だった俳優が撮影終了直後に亡くなったため、役柄が変更されたという事実も、このエピソードを語る上では欠かせません。

シリーズとの繋がり

「消えた花嫁」は、過去のエピソードとの繋がりも深く、シリーズ全体を理解する上で重要な要素を含んでいます。「クリスマスの侵略者」に登場したロボットサンタやクリスマスツリーが再登場するほか、「永遠の別れ」や「わかれ道」など、過去作への言及も散りばめられています。また、後に重要なキーワードとなるサクソンの名前も登場し、『秘密情報部トーチウッド』にも繋がっています。さらに、シリーズ4の「運命の左折」では、ドナと出会わなかった世界、そしてその結果として起こる悲劇的な未来が描かれています。

放送と評価

本作は、イギリス手話翻訳付きで放送された最初の『ドクター・フー』エピソードであり、高い視聴率を記録しました。批評家の評価も高く、ストーリー展開や俳優の演技、クリスマスらしい雰囲気などが評価されています。ただし、一部からは、ストーリーの盛り上がりに欠けるという意見も挙げられています。

DVDリリース

「消えた花嫁」は、他のクリスマススペシャルと共にボックスセットとして発売されています。

「消えた花嫁」は、クリスマスの賑やかさとサスペンス、そしてシリーズ全体への伏線が巧みに織り込まれた、見応えのあるエピソードです。過去のエピソードを知っていればさらに楽しめる要素も満載で、『ドクター・フー』ファンならずとも、クリスマスシーズンに楽しめる作品と言えるでしょう。

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