消防用設備

日本における消防用設備

消防用設備とは、消防法及び関係政令で規定される「消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設」の総称です。これらの設備は、火災の早期発見と迅速な消火、そして安全な避難を目的としています。一般的に、消火設備、警報設備、避難設備の3つに大別されます。

消防用設備は消防法によって規定されており、その他に建築基準法に規定された防火扉などの防災設備があります。これらは関連法令が異なるため、建築時には建築基準法、消防法、および市町村条例との整合性が求められます。しかし、建物の運用開始後は、防災設備として一括して管理されることが一般的です。

警報設備

自動火災報知設備（自火報）

火災を常時監視し、感知時にはベルなどで警報を発する設備です。非常放送設備と連動して、音声で火災を報知するものもあります。

非常警報設備及び非常放送設備

非常警報設備は、押しボタンを押すことで非常ベルやサイレンを鳴らし、火災を周囲に知らせます。自動火災報知設備が設置されている場合は免除されることがあります。非常放送設備は、ホテルや病院などの建物に設置が義務付けられており、非常時には音量調整を無効化したり、通常時の放送プログラムを停止させたりして、全館に非常放送を行う機能を持っています。自火報との連動では、火災信号により自動的に音声放送が流れます。小規模な建物では、警鐘や携帯用拡声器、手動式サイレンなどが用いられます。

ガス漏れ火災警報設備

可燃性ガスなどのガス漏れを感知し、報知する設備です。地下街や有害ガスが発生する可能性の高い場所に設置が義務付けられています。

漏電火災警報器

木造ラスモルタル仕上げの建築物において、漏電による火災を予防するための装置です。漏電が発生すると、ブザーやベルなどで警報を発し、関係者に知らせます。

避難設備

建物は消防法により、原則として2方向に避難できるように設計されています。しかし、建物の規模や敷地の状況によっては、避難器具を設置して2方向避難を確保します。また、収容人数が多い場合は、避難器具を設置して通常の避難経路を補完します。

避難はしご

非常時に使用できるはしご型の設備で、折りたたみ式や固定式、ハッチ収納式など様々な形式があります。集合住宅などでは、各階のバルコニーに上下階とを結ぶ避難はしごと避難用ハッチが設けられることが多いです。

避難階段

地上階に直接通じている避難用の階段です。

救助袋

上層階の窓際などに設けられた布製の筒状の器具で、内部を滑り降りて地上階まで避難します。斜降式と垂直式があります。

緩降機

着用具を身につけ、ロープに吊り下げられて降下する設備です。

避難滑り台など

病院や幼稚園など、はしごなどの通常の設備を使用することが難しい場所に設置されることがあります。

誘導灯

非常口や避難通路を示すための発光式表示板で、常時点灯しており、停電時には内蔵充電池によって一定時間発光します。

非常用照明器具

非常口や避難通路を照らすための照明器具で、通常は消灯していますが、非常時には内蔵充電池や非常用電源によって一定時間点灯します。

消火設備

屋内消火栓設備

消防隊が火災現場に到着するまでの初期消火に用いられる設備で、建物内にいる人が操作します。消火栓、ホース、筒先などが箱に収められています。1号消火栓、易操作性1号消火栓、2号消火栓の3種類があり、それぞれ操作方法や放水能力が異なります。

スプリンクラー設備

火災を自動的に感知して散水し、消火する設備です。欧米では、自動火災報知設備よりも優先して設置が義務付けられている場合があります。

屋外消火栓設備

屋内消火栓よりも放水能力が高く、屋外に設置して軒高の高い工場や倉庫などの消火、延焼防止に用いられます。

動力消防ポンプ設備

消防ポンプ自動車や可搬消防ポンプと水源からなる設備で、2階までの建築物であれば消火栓設備の代替として使用できます。

水噴霧消火設備

水を霧状に噴射し、油火災や変電設備など、通常の消火設備では対応できない火災を鎮圧する設備です。

泡消火設備

泡を使用することで、水よりも消火能力を高め、特に油火災に効果を発揮します。駐車場などに使用されることが多いです。

粉末消火設備

ガス系消火設備や泡消火設備と類似していますが、凍結の恐れがある場所などで用いられます。

ガス系消火設備

二酸化炭素、窒素、イナートガス、代替ハロンなどを使用し、メインフレームやサーバー室、変電室などに用いられる特殊な設備です。

パッケージ型消火設備

粉末・強化液・泡などの消火薬剤を自動または手動で放出する設備で、厨房などの油を扱う施設に設置されることが多いです。

消火活動上必要な設備

消防用水

広い敷地にある大規模な建築物では、消防隊が延焼段階の火災を消火するための水利として、一定量の水を確保する必要があります。

連結送水管

高層建築物やアーケードなどで、消防隊が迅速に消火活動を行えるように、建物内に設けられた送水用の配管です。

連結散水設備

スプリンクラー設備のない地下室でも有効に消火活動ができるように、散水ヘッドに消防隊が水を送る設備です。

火災階表示盤

高層建築物や特殊建築物において、各階の非常用エレベーター附室に火災階を表示する設備です。

非常コンセント設備

消火活動に必要な器具類に電力を供給するための設備で、非常電源や耐熱・耐火配線を用いて設置されます。

無線通信補助設備

地下街など、地上の電波が届きにくい場所で、消防隊が無線連絡を行うための設備です。

排煙設備

火災時に発生する煙を排出するための設備で、建築基準法で設置が義務付けられる排煙設備とは別に、消防排煙と呼ばれるものがあります。

非常用エレベーター

31mを超える高層建築物に設置が義務付けられており、火災発生時には消防隊が消火活動に使用します。

消火器具

持ち運びが可能で、初期の火災に対して有効な消火器や簡易消火用具などがあります。

法的規制

消防法により、消防用設備の設置・定期検査は建築物の管理権原者に義務付けられています。また、消防計画の作成や消防用設備の管理は防火管理者が行う必要があります。これらの設備は、甲種消防設備士や乙種消防設備士、消防設備点検資格者による設置・整備・点検が義務付けられています。

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