漏電火災警報器

漏電火災警報器：火災予防の要となる警報システム

漏電火災警報器は、建物の漏電を早期に検知し、警報を発することで火災を予防する消防用設備です。消防法でその設置基準や技術基準が定められており、特定の建物においては設置が義務付けられています。

漏電火災のメカニズムと警報器の役割

木造建築物などで、ラスモルタル仕上げが施されている場合、電源引き込み口の絶縁不良により漏電が発生すると、ラスの金属部に電流が流れ、電気抵抗による発熱で木部が加熱され、火災に至る可能性があります。漏電火災警報器はこのような事態を未然に防ぐために設置されます。漏電を検知すると直ちに警報を発報し、関係者に危険を知らせ、迅速な対応を促すことで、火災の発生・拡大を抑制します。

漏電火災警報器の構成

漏電火災警報器は、主に変流器と受信機から構成されています。変流器は、受電設備で使用される零相変流器と原理・構造が類似しており、電力線の電流変化を検知します。受信機は変流器からの信号を受け取り、漏電を検知すると警報を発します。以前は受信機の定格電流によって一級と二級に分類されていましたが、2013年の消防法改正によりこの区分は廃止されました。

法令と設置基準

漏電火災警報器の設置基準は、消防法施行令で定められています。主に、壁、天井、床などの下地が不燃材料以外（木材など）で構成され、その上に金網（ラス）を貼った構造の建築物が設置対象となります。延べ面積が一定規模以上の建築物に設置義務がありますが、特別防火対象物（消防法施行令別表第1の第9項、公衆浴場を除く）で契約電流容量が50アンペアを超えるものについては、面積に関わらず設置が義務付けられています。集合住宅以外の一般住宅には設置義務はありませんが、マンションなどのキュービクル内に設置されるケースもあります。

技術基準と自主表示制度

漏電火災警報器の技術基準は、「漏電火災警報器に係る技術上の規格を定める省令」で定められています。以前は型式検定制度がありましたが、2014年4月1日からは自主表示制度に移行しました。そのため、現在では、自主表示品としての規格に適合している旨の表示がないものは販売・工事使用できません。

設置・点検、報告義務

設置が義務付けられている建物では、設置工事や点検において、所轄の消防署に工事計画書や点検結果報告書の提出が義務付けられています。点検は、特別防火対象物では年2回、それ以外の対象物では年1回行う必要があり、点検・整備には消防設備士乙種第7類の資格が求められます。設置工事には第二種電気工事士以上の資格が必要です。

動作試験

点検においては、外観目視検査に加え、動作試験が実施されます。動作試験は、受信機の変流器信号入力端子に動作試験電圧を加えることで行います。

漏電遮断器との違い

漏電遮断器と漏電火災警報器は、どちらも漏電を検知する原理は同じですが、目的が異なります。漏電遮断器は漏電を検知したら電源を遮断しますが、漏電火災警報器は警報を発することが目的です。そのため、漏電を検知しても電源を遮断する必要はありません。ただし、技術的・法律的に遮断機能を付加することも可能です。両者は公称作動電流値、準拠法規が異なり、兼用はできません。また、漏電リレーを漏電火災警報器として使用することもできません。ただし、非常電源回路に必要な漏電警報装置として使用することは可能です。

歴史

関東大震災後、ラスモルタル外壁の増加に伴い漏電火災が増加したことから、漏電火災警報器の原型となる電気火災警報器が開発されました。1961年の消防法施行令公布により、メタルラスモルタル建築への設置が義務付けられ、需要が急増しました。その後、供給過剰を経て、現在に至っています。

まとめ

漏電火災警報器は、漏電による火災を予防するために不可欠な消防設備です。設置義務のある建物では、適切な設置、点検、保守を行うことが重要です。

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