涙の道

涙の道（Trail of Tears）

涙の道とは、1838年にアメリカ合衆国のチェロキー族インディアンが強制的に移住させられた過程の悲劇を指します。この酷しい移動により、約15,000名のチェロキー族のうち4,000から5,000人が途中で命を落としました。この歴史的事件は、1830年の「インディアン移住法」に基づいて行われました。

背景

19世紀初頭、アメリカ合衆国の急激な人口増加により、特に南部ではアメリカ・インディアンとの緊張関係が高まっていきました。ジョージア州では、連邦政府と1830年に結ばれた協定により、インディアンの土地を州が管理できるようになりました。この時期、チェロキー族などの先住民は独自のアイデンティティを保持したいと考えていたため、州政府との対立が深刻化していきました。

特に1829年にジョージア州ダーロネガで金鉱が発見されると、この地域に住むチェロキー族の土地が狙われるようになり、急速に人口が押し寄せてきました。そのため、チェロキー族を移住させる圧力が強まっていったのです。

チェロキー族の抵抗

チェロキー族内には、移住に対して強力に抵抗する声がありました。ロス首長を中心とする反対派と、ジャクソン政権と交渉を図るリッジ党に分かれていきました。1835年にはニュー・エコタ条約が批准され、チェロキー族の土地を合衆国に移譲する内容が含まれていました。しかし、この条約は大部分のチェロキー族に受け入れられず、結果的に分断が生じました。

強制移住の実施

1838年、アメリカ合衆国政府は強制的な移住を開始しました。ウィンフィールド・スコット将軍が指揮する軍隊が、チェロキー族を宿営地に集め始め、最終的には約17,000人が移動を余儀なくされました。移動中、赤痢などの病気が流行し、多くの人々が命を落としました。この期間、チェロキー族は辛い旅の中で、賛美歌「アメイジング・グレイス」を歌い、士気を高め合いました。

移住後の影響

涙の道によって、移住させられたチェロキー族は当初オクラホマ州に定着し、文化や人口も持ち直しました。この出来事は、アメリカの歴史の中でも特に悲劇的な話として広く認識されています。1987年にはアメリカ合衆国議会によって「涙の道国立歴史の道」が設立され、今も多くの人々にこの歴史を伝えています。

涙の道は、無理な移住がもたらした人々の悲しみと、文化の損失を象徴する出来事です。失われた命や文化を忘れないためにも、この歴史を今後も学び続けることが重要です。

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