淡路公園

淡路公園（あわじこうえん）

東京都千代田区に位置する淡路公園は、歴史の変遷を経て現在の姿となった都市公園です。この地の歴史は古く、公園が整備される以前から教育機関が集まる場所として知られていました。

公園のなりたち

淡路公園は、1923年（大正12年）に関東大震災が発生し、壊滅的な被害を受けた後の帝都復興事業の一環として計画・整備されました。この復興事業では、将来的な災害に備え、火災の延焼を防ぎ、人々が集まることができる防災空間の確保が重視されました。淡路公園も、そうした防災機能を担う「復興小公園」の一つとして開園したのです。

その後、時代を経て地域の再開発が進められ、2013年には淡路町二丁目西部地区第一種市街地再開発事業に伴い、公園も新たに整備されました。この再整備では、隣接する複合施設「ワテラス」と一体的な緑地空間として計画され、「神田花暦園」をコンセプトに、一年を通して様々な植物の彩りを楽しめるよう配慮された空間となっています。

沿革に見る土地の歴史

現在の淡路公園がある場所には、かつて重要な教育機関が存在していました。1871年（明治4年）には、後に開成中学校となる共立学校が創立され、この地で教育活動を行っていました。共立学校は1895年（明治28年）に開成中学校と改称しましたが、用地の問題などから移転を検討している最中に関東大震災が発生し、その影響もあって1925年（大正14年）に移転しました。

また、1875年（明治8年）には、千代田区立淡路小学校の前身にあたる小川小学校もこの地に開校しました。しかし、1923年（大正12年）の関東大震災による火災により、校舎はわずか30分ほどで焼け落ちてしまいました。

震災後の復興計画では、こうした経験を踏まえ、地域の防災拠点としての役割と教育機能を両立させるため、災害に強い鉄筋コンクリート造りの復興小学校と小公園を隣接して整備するという方針が立てられました。淡路小学校は1927年（昭和2年）3月にコの字型の校舎として再建され、その校舎の西側に淡路公園が整備されました。当時、淡路小学校の児童たちは、コの字型校舎の内側の校庭を「下の公園」、そして淡路公園を「上の公園」と呼んで親しんでいたといいます。

淡路小学校は地域に根差した教育を長年行ってきましたが、時代の流れとともに閉校し、その跡地を含む一帯が2013年の再開発事業の対象となりました。再開発により、淡路小学校の跡地はワテラスの一部として利用され、隣接する形で淡路公園が再整備されたのです。

園内に残る歴史の証

再整備された淡路公園内には、この土地が歩んできた歴史を伝えるいくつかの記念碑が設置されています。一つは「開成學園発祥の地」の碑です。これは、1871年の創立から関東大震災の影響で移転するまでの約50年以上にわたり、開成学園（前身を含む）がこの地にあったことを記念して建てられたものです。もう一つは「淡路小学校校歌の碑」です。かつて地域の子どもたちの学び舎であった淡路小学校が存在した記録として、校歌が刻まれた碑が公園の一角に静かにたたずんでいます。

公園の周辺には、御茶ノ水ソラシティや日本ハリストス正教会教団のニコライ堂など、現代的なビルや歴史的建造物が立ち並び、多様な景観を形成しています。

淡路公園は、関東大震災からの復興という歴史的な背景を持ちながら、かつて学びの場であった記憶を留め、そして現在の都市空間に溶け込む緑地として、地域住民や来訪者に憩いの場を提供しています。防災公園としての原点を持ちつつ、再開発を経て生まれ変わったこの公園は、過去と現在、そして未来をつなぐ場所と言えるでしょう。

もう一度検索