深澤祐二

深澤祐二（ふかさわ ゆうじ）

深澤祐二氏は、1954年11月1日生まれの日本の実業家です。現在、東日本旅客鉄道株式会社（JR東日本）の取締役会長を務めています。

人物とキャリアの原点

自身のルーツは北海道函館市にあり、幼い頃から国鉄に勤めていた父親の姿を見て育ちました。特に青函連絡船の船員であった父の影響は大きく、自然と鉄道の世界に興味を持つようになりました。故郷の函館ラ・サール高等学校を1973年3月に卒業後、東京大学法学部へと進学。1978年4月に同大学を卒業後、父と同じ日本国有鉄道（国鉄）の門を叩きました。国鉄時代には、後のJR西日本金沢支社となる金沢鉄道管理局で旅客課長を務めるなど、現場や企画部門での経験を積んでいます。

JR東日本での歩み

1987年4月、国鉄の分割民営化という大きな変革期に、深澤氏は東日本旅客鉄道（JR東日本）へ移籍しました。移籍後は人事部に配属され、組織運営の要に携わります。その後、総合企画本部投資計画部長として会社の将来戦略に関与し、2006年6月には取締役人事部長兼総合研修センター所長に就任。組織と人材育成の両面でリーダーシップを発揮しました。2008年6月に常務、2012年6月には副社長に昇進し、ジェイアールグループ健康保険組合の理事長も兼任するなど、経営の中枢を担うようになります。さらに2017年6月からは副社長社長補佐として会社全体の統括に関わり、特にインド高速鉄道計画など、海外事業への貢献も行いました。

北海道新幹線開業と故郷への思い

副社長時代の2016年3月には、北海道新幹線が新函館北斗駅まで開業しました。函館出身である深澤氏は、この記念すべき開業式典に参列し、故郷と首都圏が鉄道で直結する歴史的な瞬間に立ち会いました。これは、父親が勤務した青函連絡船に代わる新たな大動脈の誕生であり、個人的にも深い感慨があったことでしょう。

社長としての経営課題と変革

2018年4月、深澤氏はJR東日本の代表取締役社長に就任しました。しかし、就任から間もない2020年頃から、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という未曽有の事態に直面します。これにより、人々の移動が大幅に制限され、鉄道事業は歴史的な需要減少に見舞われました。この困難な状況下で、深澤氏は従来のビジネスモデルからの転換を強く推進しました。「駅は単に切符を販売し、乗客が電車に乗降するだけの場所ではない」という考えを示し、駅の機能を多様化・高度化させる方針を打ち出しました。具体的には、駅構内の空きスペースなどを活用したシェアオフィスの大幅な拡充や、駅周辺エリアを含めた商業施設の整備・開発を積極的に推進。鉄道事業だけでなく、生活サービス事業を強化することで、収益構造の変革と企業価値の向上を目指しました。これは、コロナ禍という危機を、事業構造を見直す機会として捉えた深澤氏の経営手腕を示す事例です。

同期とのネットワーク

深澤氏のキャリアは、多くの鉄道業界の重要人物との繋がりによっても特徴づけられます。東京大学法学部および国鉄入社において同期だったのは、後に東海旅客鉄道株式会社（JR東海）の会長を務める金子慎氏です。また、同じく国鉄同期には、JR東日本で共に働き、後に北海道旅客鉄道株式会社（JR北海道）の会長を務めた田浦芳孝氏や、西日本旅客鉄道株式会社（JR西日本）の社長・副会長を歴任した来島達夫氏などがいます。これらの同期との交流は、鉄道業界全体の動向を理解する上で重要な役割を果たしたと考えられます。

会長就任

2024年4月、深澤氏はJR東日本の社長職を退き、取締役会長に就任しました。今後は、会社の経営全体を俯瞰し、持続的な成長に向けた戦略立案や対外的な活動において、引き続き重要な役割を担っていくことでしょう。

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