金子慎

金子 慎

金子 慎（かねこ しん）は、1955年（昭和30年）8月29日生まれの日本の実業家であり、現在、東海旅客鉄道株式会社（JR東海）の代表取締役会長を務めています。

来歴

富山県に生まれた金子氏は、地元の富山県立富山高等学校を卒業後、東京大学法学部第2類（公法コース）に進学し、同大学で法律を学びました。大学卒業後の1978年（昭和53年）4月、日本国有鉄道（国鉄）に入社し、鉄道キャリアをスタートさせました。国鉄時代には、1986年（昭和61年）2月には職員局労働課で補佐を務めるなど、主に人事業務に関わっていたようです。

1987年（昭和62年）4月、国鉄が分割民営化されたことに伴い、東海旅客鉄道株式会社に入社しました。JR東海では、一貫して人事部門を歩み、1991年（平成3年）3月に人事部人事課の担当課長、1994年（平成6年）6月には人事部労働課長、1996年（平成8年）6月には人事部人事課長と昇進を重ねました。その後、1998年（平成10年）6月には新幹線鉄道事業本部の管理部長に就任し、安全運行を支える現場に近い部門の管理にも携わりました。続いて、2002年（平成14年）6月には総務部長となり、会社全体の運営に関わる要職を務めました。

経営陣に加わったのは、2004年（平成16年）6月に取締役に就任し、引き続き総務部長を兼任した時からです。その後、2006年（平成18年）6月には再び人事部門の責任者として取締役人事部長を務めました。2008年（平成20年）6月には常務取締役に昇進し、総合企画本部長として会社の経営戦略立案を統括。さらに2010年（平成22年）6月には専務取締役となり、引き続き総合企画本部長を務めました。経営の中枢で手腕を発揮した後、2012年（平成24年）6月には代表取締役副社長に就任。2014年（平成26年）6月からは事務部門と、当時重要プロジェクトであった中央新幹線の推進本部を担当する代表取締役副社長として、リニア中央新幹線の建設推進にも深く関わりました。2018年（平成30年）4月には代表取締役社長に就任し、JR東海のトップとして指揮を執り、2023年（令和5年）4月より現職である代表取締役会長を務めています。

人物・経営者として

金子氏は、日本の主要な鉄道会社を率いる経営者たちと深い関わりを持っています。特に、東日本旅客鉄道（JR東日本）の会長である深澤祐二氏は、金子氏と同じく東京大学法学部を卒業し、国鉄に入社した同期にあたります。また、北海道旅客鉄道（JR北海道）の会長を歴任した田浦芳孝氏や、西日本旅客鉄道（JR西日本）の社長や副会長を務めた来島達夫氏も、国鉄時代の同期として知られています。

新幹線鉄道事業本部での勤務経験を持つ金子氏は、副社長在任中の2017年（平成29年）12月に、東海道新幹線のぞみ号で台車に亀裂が入るという重大なインシデントが発生し、運行が名古屋駅で打ち切られる事態に直面しました。さらに、社長就任直後の2018年（平成30年）6月には、東海道新幹線の車内で乗客が殺傷されるという痛ましい事件が発生しました。これらの安全に関わる重大な出来事への対応は、経営者としての手腕が問われる場面となりました。特に、殺傷事件後には、利用者から空港のような手荷物検査を導入すべきだとの意見も寄せられましたが、金子氏はこの時点で、そのような厳格な検査は鉄道の「利便性を著しく損なう」との考えを示し、導入は難しいとの見解を表明しました。その代わりに、駅構内での警備員を増員するなど、巡回や警戒体制を強化する措置を講じました。

また、金子氏は、JR西日本の元社長・会長である井手正敬氏の発言に対し、公の場で反論したことでも注目を集めました。2022年（令和4年）10月、井手氏が産経新聞のインタビュー記事で、JR東海の葛西敬之名誉会長が将来的に東海と西日本を合併させ、東西で分ける構想を持っていた可能性に言及したことに対し、金子氏は同月20日の定例記者会見で異論を唱えました。金子氏は、この合併案は葛西氏から直接「井手さんの構想」として聞いたものであり、葛西氏自身の考えではなかったこと、むしろ葛西氏は否定的だったと説明しました。さらに、葛西氏が生前に出版した著書においても、この構想は「井手氏の構想」として記されていることに触れ、「葛西の生前の考えとは異なっており、亡くなってから（井手氏が）おっしゃるのはどうなのか」と述べ、井手氏の発言に対して批判的な見解を示しました。これらの対応から、金子氏が安全運行への強い意識と、故人である葛西氏の立場を重んじる姿勢を持っていることがうかがえます。

現在、代表取締役会長として、JR東海の経営全般において重要な役割を担っています。

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