深雪 (駆逐艦)

駆逐艦「深雪」の艦歴と沈没の詳細

駆逐艦「深雪」は、1910年代初頭に日本海軍が誇る吹雪型であり、特にその艦歴には数多くの出来事が詰まっています。その歴史は1927年の起工から始まります。1928年に進水し、1929年の竣工時には第11駆逐隊に編成され、同僚艦には「吹雪」「白雪」「初雪」がいました。

艦の建造と初期の活動

「深雪」は、当初は第38号駆逐艦として命名され、浦賀船渠で建造が進められました。進水後、1929年の6月29日に正式に竣工し、呉鎮守府に所属しました。艦長には初代の加藤仁太郎中佐が就任し、艦の運用と訓練が開始されました。

艦の初期の活動では、射撃訓練などにも参加し、1929年8月には他艦からの流れ弾により軽微な損傷を受けるなど、運用上の厳しさも体験しています。その後、1930年代にかけて様々な艦長が交代し、艦の運用が続いていきます。

演習と衝突事故

1934年6月、「深雪」は済州島沖で行われた連合艦隊の演習に参加しました。この演習は、多数の艦艇が参加する大規模なものでしたが、そこで思わぬ事故が発生しました。6月29日、深雪は他の駆逐艦「電」と衝突し、艦首を喪失してしまいます。

「電」との衝突は、視界不良や演習中の混乱から起きたもので、深雪の艦体は艦橋の直下で断裂してしまいました。救助のために「那珂」が曳航にあたるものの、浸水が止まらず、深雪は沈没する運命に見舞われました。

沈没の経緯

衝突から間も無く、深雪は浸水によって沈没しました。乗組員は「那珂」へ移動し、軽傷者は他の艦艇に収容されましたが、最終的に深雪は沈んでしまいます。沈没地点は北緯32度51分、東経127度11分とされ、行方不明となった艦首部分は探し出せず、深雪の最期を迎える結果となりました。

この事故によって、残念ながら水兵2名と機関兵1名が命を落とし、また他にも行方不明者が出ました。衝突を目撃した高松宮宣仁親王は、その悲劇的な瞬間を深い憂慮をもって振り返り、訓練の厳しさと艦隊の状況を強調しました。

歴史的な意義

「深雪」の沈没は、日本海軍にとって重要な教訓をもたらしました。艦の構造把握不足や緊急時の対応の失敗が深雪の沈没に直結しており、これ以降の艦隊では応急処置に関する教育と訓練が強化されることとなりました。さらに、「深雪」は特型駆逐艦として最初に沈没した艦であり、その影響は艦隊の訓練方針にも反映されることとなります。

1100名前後の艦に搭載される乗組員は、「深雪」の喪失から心を一つにして訓練に励むようになり、艦隊の結束と意識の向上へとつながったのです。

日本海軍の歴史の中の一つの事件として、「深雪」の沈没は今も多くの海軍関係者や歴史研究家に記憶されています。

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