浦賀船渠

浦賀船渠（うらがせんきょ）

浦賀船渠は、神奈川県横須賀市にかつて存在した著名な造船所です。この施設は日本海軍の駆逐艦建造で特に知られており、また太平洋戦争後も艦艇の製造が行われていましたが、2003年に閉鎖されました。2021年3月には、住友重機械工業から横須賀市に無償で寄付され、現在では文化遺産として一般に公開されています。

浦賀の造船の歴史

浦賀での造船活動の起源は1853年、アメリカのペリー提督が来航した際の「大船建造の禁」解除に遡ります。江戸幕府は浦賀造船所を設置し、ここで国産初の洋式軍艦「鳳凰丸」を建造しました。続く1859年には日本初のドライドックが完成し、咸臨丸の整備が行われました。しかし、横須賀港に重工業が進出することが決まり、艦船建造の中心は浦賀から横須賀に移行。浦賀造船所は1876年に廃止されました。

浦賀船渠の設立

1897年、中島三郎助の志を継いだ荒井郁之助、榎本武揚、塚原周造の3名によって浦賀船渠が設立されました。この新たな造船所は旧浦賀造船所と同じ場所に位置し、東京石川島造船所の浦賀分工場との間で艦船建造や修理の受注競争が繰り広げられました。後に浦賀船渠は石川島の工場を買収し、自社の施設として運営し始めます。

艦艇建造の歴史

浦賀船渠は当初、経営が厳しい時期がありましたが、渋沢栄一などの支援を受けて1912年に経営が安定しました。その後、第一次世界大戦による軍需の増加もあり、艦艇建造が本格化します。1907年には駆逐艦「長月」を建造し、以降も駆逐艦の建造で名を馳せました。浦賀と同じく駆逐艦建造の名門とされる藤永田造船所と共に「西の藤永田、東の浦賀」と称されました。これまでに駆逐艦44隻、軽巡洋艦2隻、海防艦11隻などが建造されています。

1914年には国内で初となる鋼製貨物船「第五長久丸」が竣工し、多くの同型船がつぎつぎに受注され、経営はさらに順調となります。1924年には旅客兼車両渡船の青函連絡船「翔鳳丸」が竣工され、その後も多くの青函連絡船を建造することになります。

戦後の展開

太平洋戦争後、浦賀船渠では海上自衛隊向けの艦艇建造が行われ、「ミッドウェイ」などの大規模な改修も手掛けました。特に住友機械工業との合併後は新たな船舶の建造が進められましたが、工場集約の流れの中で2003年に閉鎖されることになりました。その後は資材置場として使用されていましたが、2021年に横須賀市へ無償寄付され、現在は「浦賀レンガドック」として一般公開されています。

文化遺産としての意義

特に浦賀船渠の第1号ドック（浦賀ドック）は世界に4か所しか存在しない貴重なレンガ積みのドライドックの一つとされ、更に国内の明治期のドックはほとんどがこの浦賀ドックと川間ドック跡のみとなります。そのため、浦賀船渠自体は重要な文化財とされており、保存・活用が進められています。2021年に横須賀市からの一般公開の発表があり、訪れる人々に歴史的な視点を提供しています。

浦賀船渠の歴史とその価値は、単なる造船所としての役割を越え、地域の誇りや文化的遺産としての意義を持つ存在となっています。

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