混合ガス

混合ガスとは

混合ガスとは、複数の高純度ガスを特定の割合で混合したガスの総称です。その用途は多岐にわたり、産業からレクリエーションまで幅広く利用されています。

溶接における混合ガス

溶接、特にアーク溶接においては、溶接部への空気の混入を防ぐために混合ガスが用いられます。空気中の窒素が溶融金属に溶け込むと、凝固時に気泡となり、溶接部の強度を著しく低下させてしまうためです。このため、溶接部を空気から遮断する目的でシールドガスが使用されます。

シールドガスとして一般的な混合ガスは、不活性ガスであるアルゴンと二酸化炭素の混合です。このガスを用いるアーク溶接は、特にマグ溶接と呼ばれています。

半導体製造における混合ガス

半導体製造においても、混合ガスは重要な役割を果たします。ウェハー上の結晶成長促進など、さまざまなプロセスで使用され、その種類は1万を超えるとも言われています。これらの混合ガスの多くは人体に有害であるため、取り扱いには細心の注意が必要です。

潜水における混合ガス

潜水においては、通常の空気の代わりに、酸素中毒や窒素酔いの防止、減圧症のリスク軽減のため、混合ガスが使用されます。潜水深度や目的に応じて最適なガス組成が選択され、混合ガスを使用する潜水は混合ガス潜水と呼ばれます。

混合ガスの種類

潜水で使用される主な混合ガスには、以下のものがあります。

ヘリオックス (HELIOX)：ヘリウムと酸素の混合ガスで、深深度潜水で窒素酔いを防ぐために用いられます。
ナイトロックス (NITROX)：窒素と酸素の混合ガスで、酸素分圧を高めることで無減圧潜水時間を延ばす目的で使用されます。
* トライミックス (TRIMIX)：ヘリウム、窒素、酸素の3種混合ガスで、ヘリオックスの高圧神経症候群を緩和するために使用されます。

この他、アルゴンと酸素の混合ガスであるアルゴックスや、水素と酸素の混合ガスであるハイドロックスなど、試験段階の混合ガスも存在します。

各混合ガスの詳細

ヘリオックスは、通常45メートル以深の深度で使用され、酸素分圧を調整する必要があります。ヘリウムは熱伝導率が高いため、体温保持対策が必要です。また、高価であるため、潜水ベルや飽和潜水など、システム潜水で主に用いられます。

ナイトロックスは、酸素分圧を高めることで、無減圧潜水時間を延長できますが、酸素中毒のリスクがあるため、使用深度に制限があります。比較的安価に製造できるため、レクリエーションダイビングでも利用されています。

トライミックスは、ヘリオックスの欠点である高圧神経症候群を避けるため、窒素を添加したガスです。テクニカルダイビングで主流となりつつあります。

混合ガスの使用法

深深度潜水では、深度に応じて呼吸する混合ガスの組成を変える必要があります。酸素中毒を防ぐため、深い場所では酸素濃度の低い混合ガスを、浅い場所では減圧停止時間を短縮するために酸素濃度の高い混合ガスを使用します。

閉鎖式スクーバでは酸素分圧を自動調整できますが、半閉鎖式や開放式スクーバでは、深度に応じた複数のタンクを携行するか、事前に設置しておく必要があります。

混合ガスの普及

混合ガス潜水には高度な知識と訓練が必要であり、特に日本ではヘリウムが高価であるため、レクリエーションダイビングでの普及は限定的です。しかし、ナイトロックスは比較的安価で安全性が高いため、利用が広がっています。


混合ガスは、それぞれの用途で最適な組成が求められる、非常に重要な技術です。特に潜水においては、安全な活動を支える不可欠な要素であり、その利用には専門的な知識と注意が必要です。

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