清原道壽

清原 道壽（きよはら みちひさ）は、1910年7月18日に生まれ、2002年6月18日にその生涯を閉じた、日本の技術教育および教育学の分野における重鎮である。東京工業大学名誉教授の称号を持ち、技術科教員としても長年にわたり教鞭をとった経験を持つ。

福岡県に生を受けた清原は、若くして教育への道を志し、1935年に東京帝国大学文学部教育学科を卒業した。卒業後は、当時の東京市滝野川区（現在の東京都北区）にあった滝野川東高等小学校の教員となり、生徒たちに工業技術を指導する実践的な教育者としてのキャリアを開始した。この初期の教育現場での経験は、後の彼の研究活動の礎となった。

第二次世界大戦中の1943年、清原氏は治安維持法違反の容疑によって逮捕・投獄されるという苦難を経験した。これは当時の思想統制の厳しさを示すものであり、教育者としての活動を一時中断せざるを得ない状況に追い込まれた。しかし、日本の敗戦に伴い1945年に釈放され、再び教育の道へと復帰する。

戦後、彼は目黒区立第六中学校の教員として、職業科（現在の技術科に相当する科目）の指導にあたった。戦後復興期における産業教育・技術教育の重要性を深く認識し、この分野の振興のために精力的に活動を開始する。1949年には、職業教育の専門家や関係者が集まる場として「職業教育研究会」を設立し、その代表を務めた（この研究会は後に「産業教育研究連盟」と改称された）。この研究会は、戦後の技術教育の理論的・実践的な発展において中心的な役割を果たした。

教育研究者としての名声を高めた清原氏は、國學院大學教授を経て、東京工業大学の教授に就任した。東京工業大学では、次世代の技術科教員養成や、技術教育学の学術的な研究推進において指導的な役割を担った。長年にわたる大学での教育・研究活動を経て、1971年に東京工業大学を定年退官し、名誉教授の称号を授与された。

東工大退官後も教育への情熱は衰えることなく、大東文化大学の教授として教壇に立ち続けた。さらに、1983年から1984年にかけては大東文化大学の学長も務め、教育行政においてもその手腕を発揮した。

清原氏の研究業績は多岐にわたるが、特に技術教育の原理、方法論、およびその歴史に関する研究は高く評価されている。彼の主要な著作としては、『教育原理 産業教育の理解のために』(1953年)、技術教育の根幹を示す『技術教育の原理と方法』(1968年)、そして日本の近代技術教育の歩みを詳細に記した『昭和技術教育史』(1998年)などがある。これらの単著に加え、現場の教員にとって有用な『職業・家庭科指導細案』や、技術教育の内容を網羅的に図解した『図解技術科全集』など、多くの共編著も手掛けており、学校教育現場への貢献も大きい。また、これらの著作活動に加え、多数の学術論文を発表しており、それらはCiniiなどの学術データベースにも収録されている。これらの活動を通じて、清原道壽は戦後日本の技術教育の確立と発展に不可欠な貢献を果たしたのである。

激動の時代を生き抜いた経験と、教育・研究への深い情熱に裏打ちされた彼の業績は、今日の日本の技術教育の基盤を築く上で、計り知れない影響を与えている。

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