清水一

清水 一：和風建築の巨匠と随筆家の二面性

清水 一 (1902年3月13日 - 1972年3月17日) は、20世紀日本の建築界に大きな足跡を残した建築家です。東京府出身の彼は、東京帝国大学工学部卒業後、大倉土木株式会社（現・大成建設株式会社）に入社。同社設計部で長年にわたり要職を務め、数々の代表作を生み出しました。その一方で、軽妙な語り口で知られる随筆家としても活躍し、建築と文化を繋ぐ独自の境地を築き上げた人物と言えるでしょう。

華麗なる建築家としての経歴

清水は、大成建設においてホテルオークラやホテルニューオータニといった、現在も日本の建築史に名を刻むランドマーク的な建物の設計に携わりました。これらの作品は、彼の卓越した設計力と、和風建築様式に対する深い理解を如実に示しています。さらに、大倉集古館(1938年)やサンフランシスコ万国博覧会日本館(1939年)といった、日本文化を世界に発信する役割を担った建築物にも携わっており、その功績は計り知れません。

1950年には大成建設取締役建築技師長に就任し、企業の中枢を担いながら設計業務を続けました。その後も取締役、常務取締役を歴任し、1963年に退任するまで、同社の発展に大きく貢献しました。退任後は顧問として企業を支えつつ、1965年には日本大学生産工学部教授に就任。教育者としても後進の育成に尽力しました。

職人技への敬愛と日本の住まいへの深い洞察

清水の建築設計は、単なる構造物にとどまらず、日本の伝統技術と職人技への深い敬意に基づいていました。彼は、熟練の職人たちと緊密に連携し、彼らの技術と経験を最大限に活かすことで、質の高い建築物を生み出しました。彼の作品からは、単なる技術力だけでなく、日本の文化と歴史に対する深い愛情が感じられます。

軽妙な筆致で魅せる随筆家

建築家としての活動に加え、清水は随筆家としても才能を発揮しました。日本の住まいに関する一般向け随筆を数多く執筆し、その軽妙な語り口と深い洞察は、多くの読者から高い評価を得ました。特に1956年に発表した『すまいの四季』は、日本エッセイストクラブ賞を受賞するなど大きな話題となりました。職人仕事や日本の住まいに関する彼の視点、そしてそれを伝える文才は、建築の世界を超えて広く人々に影響を与えました。

多彩な著作と後世への影響

建築や住まいに関する著書は、『住みよい家の建て方』、『人の子にねぐらあり』、『すまいと風土』など多岐に渡り、建築専門書から一般向けの書籍まで幅広い分野で執筆活動を行いました。これらの著作は、建築技術の解説だけでなく、日本の伝統文化や生活様式への理解を深める上で貴重な資料となっています。彼の著作は、現代においても建築、デザイン、文化研究者などに広く参照され、その影響は絶大です。

まとめ

清水一は、建築家として、そして随筆家として、日本の建築文化の発展に大きく貢献しました。彼の作品や著作は、単なる技術や知識の伝達にとどまらず、日本の伝統と文化への深い愛情、そして職人技への敬意に満ち溢れています。彼の生き様と仕事は、現代の建築家やデザイナー、そして日本の文化に関心を持つ人々にとって、今もなお大きな示唆を与え続けていると言えるでしょう。彼の功績は、単なる建築物の建造にとどまらず、日本の文化と生活様式への深い洞察と、それを伝える優れた表現力によって、後世に長く語り継がれるに値するものです。

もう一度検索