清水正之

清水 正之

（しみず まさゆき）

1947年（昭和22年）生まれの日本の倫理学者、思想史家。専門は倫理学、特に日本倫理思想史をフィールドとしている。教育機関において要職を歴任し、聖学院大学の学長や学校法人聖学院の理事長を務めた。

人物と来歴

神奈川県横浜市に生を受ける。学術の道に進み、1971年に東京大学文学部倫理学科を卒業した。さらに学びを深めるため、同大学院人文科学研究科に進学し、1977年には博士課程を単位取得の上で退学している。

研究者、教育者としてのキャリアは、三重大学人文学部にて助教授、後に教授を務めたことから始まる。その後、東京理科大学の教授を経て、2007年には聖学院大学の教授として着任した。

長年の研究活動は実を結び、2013年にはお茶の水女子大学より博士（人文科学）の学位を取得している。この際の博士論文は、『国学の他者像 : 誠実と虚偽』と題されている。

教育機関の運営においても重要な役割を担った。2015年4月には、姜尚中氏の後任として聖学院大学の学長に就任。さらに、2017年4月からは阿久戸光晴氏の後任として学校法人聖学院の理事長職を務めた。

研究活動と主な著作

清水正之氏の研究は、一貫して倫理学、とりわけ日本倫理思想史に深く根差している。博士論文となった『国学の他者像 誠実と虚偽』（ぺりかん社、2005年）は、氏の代表的な研究成果の一つであり、国学という思想潮流が、どのように自らの内と外を区別し、「誠実」と「虚偽」という倫理的観念を捉えたのかを探求するものである。

一般向けの著作も多く手掛けており、日本思想の全体像を解説する『日本の思想』（放送大学教育振興会、2008年）や、近現代を含む日本思想史を通観する『日本思想全史』（筑摩書房〈ちくま新書〉、2014年）などがある。これらの著作は、専門知識を持つ研究者のみならず、広く一般の読者に対しても日本思想への理解を促すことを意図している。

共編著としては、佐藤康邦氏、田中久文氏と共に編集した『甦る和辻哲郎 人文科学の再生に向けて』（ナカニシヤ出版〈叢書倫理学のフロンティア〉、1999年）がある。これは、日本の代表的な思想家である和辻哲郎の思想を現代において再評価し、人文科学のあり方を問い直す試みである。

また、翻訳活動にも積極的に関わっている。ヘルマン・オームスの古典的な研究書『徳川イデオロギー』を、黒住真氏、沢一氏、頼住光子氏と共同で翻訳し、1990年にぺりかん社から刊行している。この翻訳は、江戸時代の支配イデオロギーに関する理解を深める上で重要な貢献となっている。

清水正之氏は、自身の専門分野である日本倫理思想史における探求を深めるとともに、教育者として大学や学校法人の運営にも携わり、研究と実務の両面から日本の学術・教育界に寄与した人物である。

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