清水正博

清水 正博の人物像

清水正博（しみず まさひろ、1922年4月7日 - 2008年12月21日）は、日本の実業界において重要な役割を果たした実業家である。彼は北辰電機製作所（現在の横河電機）の代表取締役社長として、戦後の企業再建と成長を牽引してきた功績で知られている。また、北辰工業（現在のシンジーテック）の代表取締役会長も務めた。彼の経歴や業績は、日本の技術革新や企業運営の歴史を理解する上で欠かせない要素である。

来歴

清水正博は、戦前から存在した工業計器およびプロセス制御システムを製造する北辰電機製作所の創業者、清水荘平の長男として東京に生まれた。彼は1947年に早稲田大学商学部を卒業後、家業である北辰電機製作所に入社することになる。入社当初から彼は父・荘平の元で働き、1951年には同社の監査役、1956年には専務取締役に昇進。その後、1964年には父の会長就任に伴い、社長に就任した。

当時の北辰電機は、戦前から軍需産業に深く依存していたため、戦後の再建が急務だった。戦争の影響で会社は厳しい状況にあったが、正博は父を支えながら新しいビジネスモデルの確立に尽力した。彼の指導の元、北辰電機はディジタル多点監視装置やプロセス用計算機など、革新的な新製品を次々と開発。さらには防衛産業にも再参入を果たすなど、持ち直しを図った。

しかし、1970年代に入ると、プロセス・オートメーションの分野において、他の大手総合電機メーカーが次々と参入し始めた。これにより、業界全体が厳しい競争環境に置かれることとなった。この情勢の中で正博は、国内市場の縮小による非効率さに危機感を感じ、海外市場への進出を強く推進することを決意した。また、同業他社である横河電機製作所の社長・横河正三と協力し、1983年には北辰電機製作所と横河電機製作所が経営統合することを決断。新たに「横河北辰電機」として新会社が設立され、彼は副社長に就任した。

1986年には社名を横河電機に変更し、清水は相談役として会社の発展に寄与し続けた。彼の晩年は、北辰工業の売却や、母校の早稲田大学への大規模な寄付活動に従事した。寄付金は社会科学部校舎の建設に使用され、名誉を称えた「清水正博記念館」が設立された。

年譜

• - 1922年：東京府東京市に生まれる。
• - 1947年：早稲田大学商学部卒業、株式会社北辰電機製作所に入社。
• - 1951年：同社監査役に就任。
• - 1956年：同社専務取締役に昇進。
• - 1964年：同社代表取締役社長に就任。
• - 1980年：藍綬褒章を受賞。
• - 1983年：横河電機製作所との合併により、横河北辰電機株式会社の代表取締役副社長。
• - 1985年：相談役に就任。
• - 1987年：北辰工業株式会社（現・シンジーテック株式会社）の代表取締役会長に就任。
• - 1993年：勲三等瑞宝章を受賞。
• - 1998年：早稲田大学名誉博士。
• - 2000年：早稲田大学校賓に就任。
• - 2008年：逝去（享年87歳）。

公職

彼は多くの公職にも就任し、産業界において名声を築いた。日本舶用工業会の理事や東京羽田ロータリークラブの会長、日本電気計測器工業会の副会長など、幅広い分野で影響力を持っていた。
また、計量管理協会の常任理事としても活躍し、早稲田大学の商議員として母校とのつながりを大切にしていた。

親族

清水正博の家族には、父・清水荘平（東京理科大学卒、北辰電機の創業者）や弟・清水英保（東京大学卒、日本IBM勤務、北辰電機の取締役）がおり、家族全体が日本の企業界での豊富な経験を持っていた。彼の義弟には五洋建設社長である水野廉平がおり、ビジネス界での結びつきの強さが伺える。

清水正博は、その生涯を通じて日本の実業界に多大な影響を与え、後世に残る足跡を刻んだ統率力ある経営者であった。

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