清水貞夫

清水 貞夫（しみず さだお）氏は、1940年1月21日に東京で生まれた日本の障害児教育学者です。

略歴

1962年に東京大学教育学部を卒業後、和光学園の小・中学校で教諭として教育現場での経験を積みました。1967年には宮城教育大学に奉職し、講師、助教授を経て教授に昇任。長年にわたり、障害のある子どもたちの教育に関する研究・教育活動に尽力しました。2004年に同大学を定年退官し、名誉教授の称号を授与されました。その後、長野大学社会福祉学部で教授を務め、2010年に退職しています。

研究と活動

清水氏の研究は、特に障害児教育の授業づくりや教育計画、教育課程、方法論など、実践に根ざした分野に重点を置いています。著書に『「軽度」精神遅滞の教育計画』、『障害児のための授業づくり』、『特別支援教育と障害児教育』などがあり、障害児教育の現場で役立つ具体的な知見を提供しました。また、共編著も数多く手がけており、『統合保育 その理論と実際』、『障害児教育改革の展望』、『障害児教育学』、『障害児教育における授業改善の技法』など、幅広いテーマに取り組んでいます。特に『特別支援教育と障害児教育』や『アメリカの軽度発達障害児教育 「無償の適切な教育」を保障』といった著作からは、特別支援教育制度への深い洞察と、海外の先進的な取り組みに対する関心がうかがえます。

近年の活動としては、インクルーシブ教育やノーマリゼーションといった理念の重要性を提唱し、これらを障害者の権利条約と関連付けて論じる著作も発表しています。『インクルーシブな社会をめざして ノーマリゼーション・インクルージョン・障害者権利条約』や、編著の『インクルーシブ教育への提言 特別支援教育の革新』などがこれにあたります。これらの著作は、共生社会の実現に向けた教育のあり方を問いかけるものです。また、「個別指導計画」や「個別の教育支援計画」といった、個に応じた教育支援の重要性に関する著作も多数あります。

社会活動

教育者・研究者としてのみならず、社会的な活動にも積極的に参加しており、2007年には「民主教育をすすめる宮城の会」の代表を務めました。これは、教育の機会均等や質の向上を目指す市民運動への関与を示すものです。

翻訳活動

清水氏は、海外の重要な研究成果を日本に紹介する翻訳活動にも貢献しています。特に、ノーマリゼーションの理論で知られるヴォルフェンスベルガーの著作や、精神遅滞研究におけるジグラー学派の業績、インクルーシブ教育におけるコーディネーターの役割に関する著作などを翻訳・監訳しました。これらの翻訳は、日本の障害児教育・特別支援教育研究に国際的な視点を取り入れる上で貴重な役割を果たしています。

受章

長年にわたる教育・研究への功績が認められ、2020年には瑞宝中綬章を受章しました。これは、清水氏が日本の障害児教育分野の発展に果たした重要な役割を象徴するものです。

清水貞夫氏は、教育現場での経験を基盤としつつ、理論研究、教育方法の開発、海外研究の紹介、社会提言といった多角的なアプローチを通じて、日本の障害児教育、そして特別支援教育、インクルーシブ教育の進展に顕著な貢献をした学者といえます。

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