清永賢二

清永 賢二

清永 賢二（きよなが けんじ、1943年生まれ）は、日本の教育学と犯罪学の分野で多大な貢献をしてきた研究者です。特に、犯罪行動が生まれる生態やメカニズムを研究する犯罪行動生態学、深刻な社会問題である青少年非行、そして現代社会において喫緊の課題となっている子どもたちの安全確保に関する「子ども安全学」を専門領域としています。

清永氏のキャリアは、まず国の機関である科学警察研究所で始まりました。同研究所の防犯少年部に所属し、環境研究室の研究員としてスタートし、やがて同研究室の室長に昇任。さらに犯罪予防研究室の室長も務めるなど、長年にわたり科学的な根拠に基づく犯罪予防策や少年非行問題への対策研究に従事しました。

科学警察研究所での経験を積んだ後、教育の道へと進みます。日本女子大学人間社会学部教育学科の教授として、2011年3月まで教鞭を執りました。ここでは、将来を担う教育者や研究者の育成にあたるとともに、大学内に設立された市民安全学研究センターのセンター長として、市民の安全に関わる学際的な研究を推進しました。

大学での研究・教育活動に加え、国内外の様々な機関でその専門知識を活かしました。東京大学の客員教授を務めたほか、早稲田大学大学院法学研究科でも講義を担当。また、海外にも活動の場を広げ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス（LSE）では客員研究員として国際的な視点からの研究交流を行いました。加えて、地域社会の安全向上にも深く関わり、全国安全都市会議の議長を務めたほか、愛知県春日井市安全アカデミーや長崎市の地域安全リーダー育成講座などで講師を務め、地域住民やリーダー向けの実践的な安全教育や啓発活動にも尽力しました。

研究成果を社会に還元し、より実践的な安全対策や教育を推進するため、2000年には民間のシンクタンク「ステップ総合研究所」を設立しました。この研究所では、娘である清永奈穂氏が所長を務め、学校や地域社会における安全教育プログラムの開発や普及など、子どもや市民の安全に直結する様々な活動を展開しています。

清永氏の研究と思想は、多数の著作として結実しています。単著としては、非行に走る少年たちの内面に迫った『漂流する少年たち』や『少年非行の世界』は、この分野の古典とも言える著作です。子どもたちの身を守るための具体的な方法論を示した『防犯先生の子ども安全マニュアル』は、多くの保護者や教育関係者に読まれました。また、犯罪者の視点から人間や社会を読み解くというユニークな試みである『大泥棒 「忍びの弥三郎日記」に賊たちの技と人生を読む』なども著しています。

共著や編著も多く、初期には日本海中部地震を経験した子どもたちの心理に焦点を当てた『大地震に遭った子どもたち』や、学校におけるいじめ問題を取り上げた『いじめ』などがあります。社会学的な視点からの『逸脱の社会学』や、いじめ問題の多角的な研究を集めた『イジメブックス』も手がけています。さらに、犯罪者が犯行対象を選ぶ際の心理や行動を分析した『犯罪者はどこに目をつけているか』（新潮新書）や、建築や都市設計による犯罪予防の重要性を説く『防犯環境設計の基礎』など、実践的な防犯対策に関する著作も多数あります。

長年にわたる清永氏の研究と実践は、少年非行の防止、いじめ問題への対処、そして子どもを含む市民全体の安全確保という、現代社会が直面する複合的な課題に対し、科学的根拠に基づいた深い洞察と具体的な解決策を提示し続けています。

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