渋谷巌

渋谷巌とは

渋谷巌（しぶや いわお、1914年9月28日 - 2003年12月13日）は、日本の航空技術者であり、航空機開発の分野で数多くの重要な業績を残しました。彼は中島飛行機の課長や東北大学の教授、さらに富士重工業の常務など、多岐にわたる役職を歴任しました。戦前には一〇〇式重爆撃機「呑龍」の構造設計や、超大型爆撃機「富嶽」の開発に携わり、戦後にはジェットエンジン「JO-1」の開発に尽力しました。

生涯と教育

渋谷は旧制富山高校を経て、東京帝国大学に進学しました。最初は特に航空に情熱を持っていたわけではなかったものの、数学の愛好者であった彼は、難関の航空学科への挑戦を決意しました。同期には後に著名な技術者となる東條輝雄や内藤子生、高山捷一が名を連ね、「花の十二年組」と呼ばれるグループでした。卒業論文のテーマは「薄板構造の挫屈論」であり、彼は大学図書館で最新の研究論文を徹底的に読み込む姿勢を持っていました。

卒業後、渋谷は1937年に中島飛行機に入社し、陸軍機の設計を担当しました。彼は特に薄板を使った革新的な設計で知られ、同社で「波板の巌さん」や「巌コル」といった愛称で親しまれました。在籍中には、重爆撃機「呑龍」や試作戦闘機キ87の設計に貢献し、超大型爆撃機「富嶽」の主翼設計にも関わるなど、多くの重要なプロジェクトをリードしました。戦争中には、これらの設計に加え、ジェット機の設計にも携わりましたが、戦争の終結と共に多くのプロジェクトは頓挫しました。

戦後の活動

終戦後、航空機開発が禁止され、多くの技術者が新たな道を模索しました。渋谷は1945年12月に鉄道技術研究所に転職し、1947年には東北大学で助教授として教鞭をとりました。彼は流体力学に重点を置いた研究を行い、1949年には教授に昇進しました。

1952年には中島飛行機の後継企業の一つである大宮富士工業に復帰し、再び航空機開発に従事します。特に戦後初の国産ジェットエンジン「JO-1」の開発では、プロジェクトリーダーとしてその成功に寄与しました。1955年には旧中島飛行機の5社が合併して富士重工業が設立され、渋谷は同社の航空機部門のリーダーとして活躍します。自衛隊機や軽飛行機、ライセンス生産機などの開発を指揮し、国際共同開発事業にも関与しました。

後年と受賞

渋谷はその業績を評価され、1976年には藍綬褒章を受章。2003年度には日本航空協会から航空亀齢賞を授与され、彼の功績が広く認識されました。2003年12月13日、彼は肺炎により89歳でこの世を去りました。彼の名は、航空技術の進展に大きく貢献した人物として、今なお多くの人々に語り継がれています。

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