渡辺省三

渡辺省三の生涯

渡辺省三（わたなべしょうぞう、1933年2月26日 - 1998年8月31日）は、愛媛県西条市で生まれ、プロ野球選手として活躍した投手である。彼は後にコーチやスカウトとしても球界に貢献し、特に阪神タイガースの一員として知られている。

幼少期からの成長

渡辺は6歳の時、父の仕事の関係で朝鮮に移り住むが、戦後に日本に帰国。旧制西条中学校に入学后、野球を始めた。彼の成長には、同級生の藤田元司の存在が影響を与えたとされる。卒業後、渡辺は倉敷レーヨン西条に入社すると晴れて軟式野球部に参加し、プロ野球界でのキャリアを夢見るようになった。

プロ野球界ではこのころ、数々の再編が進行し、選手の引き抜き問題が噴出。その中で渡辺は大阪タイガースの選手補充テストに応募し、打撃投手として採用され、入団することになった。1952年に正式にタイガースに所属した彼は、2年目の1953年にその資質を認められ、一軍に昇格。

野球キャリアのピーク

彼のプロとしての初登板は1953年4月5日の名古屋戦で、以後リリーフ投手として活躍。1956年には自己最多の22勝と防御率1.45という素晴らしい成績を挙げ、最優秀防御率のタイトルを手に入れた。また、同年には藤村排斥事件にも関与し、これを契機に個別契約で生涯雇用を球団と取り交わした。

1957年の広島戦では、9回を70球で投げ無失点に抑えたことで、その投球数の日本記録を樹立。彼の投球スタイルは巧妙で、打者の心理を巧みに読み取る技術に優れていた。

1962年と1964年にはリーグ優勝に貢献し、特に日本シリーズでは重要な役割を果たしたが、1965年に現役を引退。その後、阪神タイガースでコーチ職を務め、多くの若手選手を育成した。

遺産と評価

渡辺は卓越した制球力と投球術を駆使し、後の阪神エースに影響を与えた。特に小山正明は「省さんがいなければ、俺はなかった」と語り、渡辺の技術を手本にしたと証言する。彼はリリーフとしての使い勝手の良さや、急成長を遂げた若手選手の指導に多大な影響を及ぼした。

突然の死と疑問

1998年、自宅近くで遺体が発見され、自殺の可能性が指摘されることになった。しかし、自殺の動機には疑問が残り、遺族は独自に調査を始め、ついには1999年に刑事告訴を行った。

彼の生涯は、プロ野球選手としての成功以上のドラマに満ちていた。限りある時間の中で、彼が何を考え、どのように過ごしていたのだろうか。渡辺省三は、その名前を歴史に刻んだ。不屈の精神と投球術で、彼の遺産は今もなお多くのファンの心に息づいている。

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