渡辺糺

渡辺糾の生涯と武道の足跡

渡辺糾（わたなべ ただす）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将であり、槍術家としてもその名を知られています。彼は豊臣氏に仕え、通称内蔵助（くらのすけ）として多くの人に親しまれました。内蔵助流槍術の創始者として、また船津流槍術の師匠でもあった渡辺糾の波乱万丈な生涯を見ていきましょう。

準備の時代

渡辺糺の父は渡辺昌（宮内少輔）で、母は淀殿の側近である正栄尼と伝えられていますが、彼の初期の生活については詳しい記録が残されていません。父は本能寺の変の後に豊臣秀吉の馬廻衆に加わったとも言われています。こうした背景から、糾は幼少期から武将としての素質を養い、槍術の剣術に秀でるようになりました。

彼は特に豊臣秀頼に仕え、彼の槍の指南役を務めました。彼の地位は本知500石と低めであったものの、母の影響力や秀頼の師範であったことのおかげで権勢を振るっていました。その地位を利用し、鬮取奉行として大きな影響力を持っていました。

野田村の事件と名声

ある日、秀頼が部下の小姓たちと共に、津田出雲守を警護して野田村に舟で出かけた際に、酒宴を開いていたところ、薩摩の野郎組の者たちと喧嘩になってしまいました。出雲守が手傷を負い、糾が助けに入ることに。彼は1人で3人を討ち取り、残りの敵も追い払うという見事な戦いを見せたことで、その名声は一気に広がりました。

大坂冬の陣

慶長19年（1614年）、糾は大坂冬の陣に参加し、豊臣家の譜代衆として根来衆の鉄砲隊300名を指揮しました。低い禄高ながら軍司令部で重要な役割を果たし、大野治長と共に城内の重要事項を決定していました。しかし、黒門口の配置を巡り、治長との間に激しい口論が発生し、ついには殺傷沙汰に発展しかねない騒動が起こりました。周囲の人々がなだめて事態は収拾されましたが、双方にとって不快な思い出となったことでしょう。

鴫野口の戦いとその後

11月26日、糾は治長や他の僚友と共に鴫野口で戦闘に参加しますが、上杉景勝隊の直江兼続や堀尾忠晴らの攻撃に遭遇し、彼の部隊は大いに崩れて敗退します。この戦いでは大坂軍が全体として敗北を喫しましたが、糾は槍の名人として名を馳せていたにも関わらずその逃げ方が悲惨だと笑い物にされました。会戦後、彼について詠まれた狂歌「渡辺が浮名をながす鴫野川　敵にあふては目はくらの介」が流布され、しばしば嘲笑の対象となりました。

大坂夏の陣での活躍

翌年の大坂夏の陣においては、冬の陣での汚名を晴らすべく、糾は一歩も退かずに戦う決意で臨みました。彼は大指物を腰に付け、真田信繁の寄騎として道明寺や天王寺・岡山で奮戦しました。特に茶臼山では仲間と共に突撃し、信繁の指揮の下で戦いましたが、最終的には信繁が討死し、糾も多くの家臣を失いながら大坂城へと撤退しました。

深手を負った彼は、秀頼一行とは別れて千畳敷で母に見守られながら自害します。彼の命を絶つ際、秀頼から賜った一尺八寸の貞宗の刀を用いたとされています。母もすぐ後に彼の後を追い、二人は同じ場所で帰らぬ人となりました。

登場作品

その生涯はテレビドラマ『葵 徳川三代』（2000年）でも描かれ、梨本謙次郎が演じました。彼の伝説は声を大にして語られることで、今なお多くの人々の記憶に残り続けています。

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