馬廻

馬廻（うままわり）

馬廻は、騎馬を用いて大名の護衛や伝令を担当した武士たちの職制です。特に戦国時代には、大将の周囲を護衛し、戦闘における重要な役割を果たしました。この職制は、平時には大名の側近として事務的な役割も担っており、実際には顕著な武芸の技術を持ったエリートたち。馬廻は親衛隊的な存在とされていました。

歴史的背景

戦国時代以前

「馬廻」という言葉は南北朝時代の『太平記』に見られ、その当時には既に大将の側近という役割が存在していたと考えられています。

戦国時代の確立

馬廻の職制が形を成したのは、戦国時代後半です。この時期、多くの大名家で異なる呼称が使われ、例えば後北条氏の馬廻衆が著名です。また、今川氏輝が当主になった際に組織した親衛隊や、織田信長が選抜した馬廻衆は特に目立つ存在でした。信長の軍において、全体の戦術実行において重要な役割を果たし、彼らの技能は戦闘の成功を導く要因となりました。

信長の馬廻は、その精鋭部隊や小姓とともに戦闘において機動力に長けており、多くの戦いで高く評価されました。特に、名のある武士たちが馬廻から成り上がり、勝利を重ねて名を刻んでいきました。

江戸時代の状況

江戸時代に入っても、馬廻は存続し、大名の日常的な護衛を担当しました。江戸幕府では、両番と呼ばれる職制が馬廻に相当し、将軍の側近として位置付けられました。ここでも、馬廻はただの職制にとどまらず、家格においても重要な意味を持ちました。

各藩において、馬上資格が認められる者とそうでない者が存在し、ここに異なる基準が設けられました。馬廻に馬上資格が与えられる藩では、彼らの地位は広義での上級家臣として位置づけられ、藩主の側近としての役割をしっかりと果たしました。例えば、赤穂藩では、馬廻は特に尊重され、浅野家の馬廻役が多くの歴史的事件に関与しました。

近代に入るにつれ、増加する武士たちの中で馬廻は形式上の役割になりつつありました。藩内での知行高にかかわらず、馬廻相当の職に就く者や藩士が増え、実際には自己の馬を所有できない者も存在しました。これにより、馬廻の存在意義は徐々に薄れていきました。

結論

馬廻は騎馬武士の特別な役割を担い、武士社会において重要な位置を占めていました。その役割は、大名を護衛するだけでなく、事務を補助し、戦闘における決戦兵力として多様化していったのです。時代の変遷とともにその名前は残りつつも、数世代の間に様々な変化を経て、最終的には名義だけの存在となっていきました。

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