渡辺長助

渡辺長助：阪神タイガースを支えた名捕手と指導者

1956年10月11日、熊本県八代市に生まれた渡辺長助氏は、1978年のドラフト会議で阪神タイガースに3位指名され、プロ野球選手としてのキャリアをスタートさせました。八代高等学校、九州産交と歩み、プロ入りを果たした渡辺氏は、強肩と優れたリード、そして相手投手の癖を的確に捉える洞察力を持つ捕手として知られていました。

1982年、念願の一軍初出場を果たすと、1983年には巨人戦で角盈男投手から生涯唯一となる本塁打を放つなど、存在感を示しました。しかし、チームには若菜嘉晴氏、山川猛氏、笠間雄二氏など実力者がひしめき合い、レギュラーの座を掴むには至りませんでした。1984年には自己最多の42試合に出場するも、主に控え捕手として活躍。1985年以降は木戸克彦氏の台頭もあり、一軍出場機会は減少していき、1986年に現役を引退しました。

現役時代は打撃面で課題を残すも、その強肩と巧みなリード、そして豊富な野球知識はチームメイトや首脳陣からの信頼を勝ち得ていました。特に、投手陣からは、打たれないための的確な指示に定評があり、その高い能力は、控え選手でありながらもチームに欠かせない存在として長く貢献しました。

引退後も、渡辺氏は阪神タイガースに残留し、指導者の道を歩み始めます。1987年から1988年はスコアラー、1989年から1990年はブルペンコーチ補佐としてチームを支え、1991年には一軍バッテリーコーチに就任。その後もブルペンコーチ、二軍バッテリーコーチ、二軍育成コーチ、そして再びスコアラーとして、長きにわたり指導者として活躍しました。

1999年から2002年までスコアラーとしてチームに貢献した後、2003年にはチーフスコアラーに就任。球団の要職を担いながら、1996年から2011年までは選手寮「虎風荘」の寮長も兼任し、若手選手の育成にも尽力しました。選手として、そして指導者として、チームを陰から支え続けた渡辺氏の献身的な姿勢は、関係者から高く評価されていました。

2011年6月28日未明、チーム遠征先の富山市の宿舎で心筋梗塞のため急逝。54歳という若さでこの世を去りました。当日行われた広島東洋カープ戦では、阪神の選手、首脳陣は喪章を着用して試合に臨み、故人の冥福を祈りました。

渡辺長助氏は、選手としてはレギュラーの座には届かなかったものの、その卓越したリードと野球への深い知識、そして献身的な姿勢によって、阪神タイガースに多大な貢献を果たしました。捕手として、コーチとして、スコアラーとして、そして寮長として、チームを支え続けたその功績は、長く語り継がれることでしょう。彼の死は、チームだけでなく、多くの野球ファンの心に深い悲しみと大きな損失をもたらしました。

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