渡部与四郎

渡部 与四郎

渡部 与四郎（わたなべ よしろう、1927年 - ）は、日本の都市計画分野における重要な専門家であり、長年にわたり都市計画家および都市研究者として活躍しました。

経歴

東京高等学校理科を修了後、1950年に東京帝国大学第二工学部土木工学科を卒業。卒業後は建設省に入省し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。

建設省では、都市局を中心に様々な要職を歴任しました。具体的には、都市局建設専門官、経済企画庁総合開発課での勤務を経て、都市局区画整理課長、都市局審議官、そして技術参事官といった重要なポストを経験しました。これらの役職を通じて、日本の都市計画政策や土地区画整理事業の実務に深く関与し、その推進に貢献しました。

官僚として実績を積んだ後、アカデミックな世界に転じました。筑波大学社会工学系教授として教育・研究活動に従事し、さらに法政大学工学部教授として後進の指導にあたりました。大学においては、長年の実務経験で培った知識と理論に基づき、都市計画や社会工学に関する教育・研究を推進しました。

学会・団体での活動

渡部氏は、専門分野の発展にも多大な貢献をしました。特に、都市計画分野における主要な学術団体である日本都市計画学会では会長を務め、学会活動の活性化や学術交流の促進に尽力しました。また、（社）全日本土地区画整理士会の会長としても、土地区画整理事業に携わる専門家の育成や、技術・制度の向上に貢献しました。

これらの主要な役職に加え、都市計画コンサルタント協会マスター都市計画プランナーとしての専門的立場、同済大学名誉顧問、一般社団法人 日本モノレール協会顧問、EAROPH Japan評議員、NPO法人汎房総地域づくり研究会名誉会長など、国内外の様々な専門家団体や地域づくり組織においても要職を務め、その知見を広く社会に還元しました。多くの委員会や研究会にも積極的に参加し、政策提言や技術開発に関与しました。

業績と研究

渡部氏の研究活動は多岐にわたります。特に、1975（昭和50）年度には、「業務交通体系論」に関する研究が評価され、日本都市計画学会論文賞を受賞しました。これは、都市における業務活動に伴う交通の流れを分析し、その体系化を目指す先駆的な研究であり、都市交通計画の分野に重要な示唆を与えました。

その他にも、都市交通、土地区画整理の計画と実施、国土利用、地下空間利用、地域社会形成といった幅広いテーマで研究成果を発表しています。これらの研究は、単なる理論に留まらず、長年の実務経験に裏打ちされた実践的な視点を持ち合わせていることが特徴です。

著書

その研究成果や知見は、多くの著書として結実し、専門家や学生、一般市民に広く共有されています。主な著書には以下のようなものがあります。

『活生のまちをつくる : 自由時間都市における人と地域』（編著、ぎょうせい、1999年）
『地域社会の形成と交通政策』（編著、東洋館出版社、1997年）
『ニュー・フロンティアのはなし』（技報堂、1991年）
『区画整理の計画と実施』（全日本建設技術協会、1985年）
『21世紀への育都論 : 都市は人間によって創られる』（編著、技報堂出版、1980年）
『都市計画・地域計画』（技報堂出版、1973年、改訂2版 1983年）
『業務交通体系論』（技報堂出版、1975年）
『実学としての 都市計画』（監修・編集、ぎょうせい、2008年）

これらの著書からは、都市を人間生活の基盤として捉え、将来を見据えた計画の重要性を説く、氏の一貫した思想がうかがえます。

受章

長年にわたる都市計画分野への貢献が認められ、平成9年には勲三等瑞宝章を受章しました。これは、日本の都市づくりに対する氏の功績が高く評価された証と言えるでしょう。

渡部与四郎氏は、官僚、教育者、研究者、専門家団体リーダーという多角的な立場から、日本の都市計画の理論と実践の両面にわたり、その発展に多大な貢献をした人物です。

もう一度検索