渥美勝

渥美勝について

渥美勝（あつみ まさる、1877年2月13日 - 1928年11月4日）は、日本の国粋主義や民族派思想の代表的な人物です。滋賀県彦根町で生まれ、彦根藩士の家庭に育ちました。彼の家庭背景が彼の思想や活動に大きな影響を与えたことは明らかです。父を早くに失い、母に育てられた彼は、教育に力を入れ、彦根中学を卒業した後、1897年には第一高等学校に進学。さらに1900年には京都帝国大学法科に入学し、そこで哲学や宗教について深く探求する時期を過ごしました。

大学在学中に、母の死という大きな衝撃を受けたのち、彼は1904年に学業を辞め、故郷に戻り教師として働くことになります。教師としての生活の中で、児童たちが唱歌を歌う姿を見て、彼は新たな思想への目覚めを感じました。その後、大阪へ移り、鉄工所での作業員としての人生を歩み始めました。

1910年に起こった大逆事件は、彼に強い刺激を与えました。この出来事を契機に「神政維新」という理念を抱くようになり、翌年には東京へ上京します。彼は1913年から1921年の間にさまざまな職に就きつつ、街頭での演説を行い、右翼人士たちと交流を深めていきました。特に大川周明との出会いは、彼の後の活動に重要な影響を与えました。大川との縁により、満川亀太郎や北一輝といった他の思想家とも交流し、彼らとの活動は渥美の思想的背景をさらに豊かにしました。

1921年、渥美は同士たちと共に宮崎県や大分県で精神的な修練を行うため高千穂に赴きましたが、1923年の関東大震災を受けて再び東京へ戻ります。この年、彼は政治的活動を本格化させ、衆議院議員の選挙支援や、聖日本学会の結成にも参加しました。1925年には全日本興国同志会の総代に選ばれ、その活動を発展させていきました。彼の活動は日本における国家主義的な思想の醸成を目指すものでした。

1926年には、赤尾敏の建国祭においてその実現を支援し、建国会を指導しましたが、その後の活動では別れを選択しています。1927年には、議員・遠藤友四郎（つるしろう）や他の右翼人物と共に錦旗会を設立し、講演活動や各地巡回を行いました。しかし、長時間の活動が彼の健康に影響を及ぼし、1928年に東京の知人宅で急死を遂げました。彼の葬儀は約2000人が参列し、大きな盛り上がりの中で行われました。渥美は静岡県に埋葬されており、彼を記念する「渥美勝乃命碑」が建立されています。

彼の著作には、『日本之生命』（1933年）や『日本の宣言』（1940年）があります。また、彼に関する伝記として田尻隼人による『渥美勝伝』が1944年に発表され、彼の活動や思想が正確に伝えられています。

渥美勝の生涯は、個人の苦悩と親の庇護の中での成長、そして国粋主義思想への情熱と努力の歴史を物語ります。彼の多彩な活動と思想は、当時の日本における重要な位置を占めており、今後の研究や理解にとっても欠かせない要素と言えるでしょう。

もう一度検索