温泉番付

温泉番付：江戸時代の温泉ランキング

江戸時代、大相撲の番付が流行する中、温泉地を格付けした「温泉番付」が登場しました。これは、町人文化が栄えた江戸や大坂などで作成され、各地に広まりました。当時の人々は、温泉の効能を重視し、その高さを基準にランク付けを行っていました。そのため、番付には温泉名とともにその効能が記されているものもありました。

温泉番付の特徴

温泉番付は、大相撲の番付とは異なり、東日本の温泉を東、西日本の温泉を西に配置していました。ただし、必ずしも厳格な区分ではなく、幕内下位の西日本欄には東日本の温泉も含まれている場合がありました。

当時の温泉番付にはいくつかの特徴がありました。まず、作成場所によって温泉地の順位に違いが見られました。これは、作成者が地元の温泉を贔屓する傾向が強かったためです。また、交通手段が限られていたため、情報伝達において誤字脱字や温泉地の特定ミスが発生し、そのまま番付に反映されることもありました。

しかし、どの番付にも共通していたのは、大関（当時最高位）が草津温泉と有馬温泉、そして勧進元が湯の峰温泉（番付では本宮の湯）であったことです。これらの温泉は、当時から高い人気と評価を得ていたことを示しています。

明治以降と現代の温泉格付け

江戸時代に流行した温泉番付は、明治時代以降も作成されましたが、次第にその風習は廃れていきました。現代では、ベスト10やベスト100形式のランキングが主流となっています。しかし、松田忠徳氏などの温泉評論家によって、現在でも番付形式による格付けが行われることもあります。さらに、露天風呂や共同浴場など、特定の分野に特化した番付も作成されています。

「諸国温泉功能鑑」

「諸国温泉功能鑑」は、温泉番付の代表的な例です。江戸時代後期（1812～1817年頃）に出版されたとされ、当時の温泉地の状況を知る上で貴重な資料となっています。この書物も、他の温泉番付と同様に、温泉の効能を重視した格付けを行っていました。

温泉番付と現代

江戸時代の温泉番付は、現代の温泉格付けとは異なる特徴を持っていました。交通手段や情報伝達の制約、そして作成者の主観が反映されていた点などが挙げられます。しかし、当時の人々が温泉をどのように捉え、評価していたのかを知る上で、貴重な資料となっています。現代の様々な温泉ランキングと比較することで、時代の変化と、人々の温泉に対する考え方の変遷を垣間見ることができます。また、これらの歴史的資料は、現代の温泉文化を考える上で重要な示唆を与えてくれます。

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