測定マテリアル

測定マテリアルとは

測定マテリアルとは、マテリアルスキャナーなどのデバイスを用いて現実世界の物体を測定し、その結果に基づいて作成されるデジタル素材のことです。これらのマテリアルは、光の反射や透過の特性を非常に詳細に捉えることができ、3DCGのリアリティを向上させるために不可欠な要素となっています。

様々な次元の測定マテリアル

測定マテリアルは、取得するデータの種類や次元数によっていくつかのタイプに分類されます。

BRDF (Bidirectional Reflectance Distribution Function) ベース: 4次元のデータで、特定の点における光の反射特性を記述します。これは、最も基本的な測定マテリアルの形式と言えるでしょう。
SVBRDF (Spatially Varying BRDF) ベース: 6次元のデータで、面の各点における反射特性の変化を記述します。これにより、テクスチャのように空間的に変化する反射特性を表現できます。
BSSRDF (Bidirectional Scattering-Surface Reflectance Distribution Function) ベース: 8次元のデータで、表面下散乱の効果まで含めた光の反射特性を記述します。皮膚やろうそくなど、光が内部で散乱するような素材の表現に用いられます。
BSDF (Bidirectional Scattering Distribution Function) ベース: BRDFとBTDF (Bidirectional Transmittance Distribution Function) を組み合わせたもので、光の反射と透過の両方の特性を記述します。これにより、ガラスや半透明な素材の表現が可能になります。

これらの測定マテリアルは、次元数が大きくなるほど、より詳細な光の挙動を表現できます。しかし、次元数が大きいほどデータサイズが大きくなり、レンダリングの負荷も増大します。

測定マテリアルの利用方法

通常、測定マテリアルは、直接レンダリングに使用されることは稀です。多くのレンダラーでは、まずこれらのデータを物理ベースシェーディングのパラメータや曲線にフィッティングし、より扱いやすい形に変換します。しかし、一部の高度なレンダラーでは、測定マテリアルを直接利用することも可能です。この方法では、より正確な光の挙動をシミュレーションできます。

主な測定マテリアル形式

測定マテリアルには、いくつかの主要なファイル形式があります。以下に代表的な形式をいくつか紹介します。

NKデータ (.nk, .IOR): 波長ごとの複素屈折率を記述する形式です。スペクトルレンダラーで利用され、金属や誘電体の正確な光学特性を表現できます。RGBレンダラーでも複素屈折率シェーダーで利用可能な場合がありますが、その場合は三つの波長データに限定されます。
*MERL BRDFデータベース形式 (.binary):* BRDFの測定データを記述する形式です。Maxwell Renderなどのレンダラーで使用できます。
*MBSDF形式 (.mbsdf):* MDL (Material Definition Language) の一部で、BSDFの測定データを記述します。Irayなどのレンダラーで使用できます。
*AxF形式 (.axf):* SVBRDF、BTF、カーペイント（フレーク対応）、ボリューメトリックなど、多様な測定データを記述できる形式です。Iray、KeyShot、Autodesk VRED、Maxwell Render、Radeon ProRender、Unreal Engine、Unity、Substance Designerなど、多くのソフトウェアでサポートされています。
*VRscans形式 (.vrscan):* BTFの測定データを記述する形式で、V-Ray向けのプラグインで利用できます。

これらの形式は、それぞれの用途やレンダラーに合わせて使い分けられます。測定マテリアルを適切に利用することで、現実世界に限りなく近い、リアルな3DCG表現が可能になります。

参考資料

以下に測定マテリアルに関する参考資料をまとめます。

FreeSnell: Refractive Index Spectra: 屈折率のスペクトルデータを提供しています。
n,k database: 複素屈折率のデータベースです。
RefractiveIndex.INFO - Refractive index database: 様々な物質の屈折率を調べることができます。
MERL BRDF Database: BRDFの測定データを提供しています。
An Adaptive Parameterization for Efficient Material Acquisition and Rendering: 効率的な測定とレンダリングのためのパラメータ化に関する研究論文です。

これらの資料は、測定マテリアルをより深く理解するための助けとなるでしょう。

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