港人治港

港人治港（こうじんちこう）とは

「港人治港」とは、1997年7月1日にイギリスから中華人民共和国（以下「中国」）へ返還された後の香港における統治原則の一つです。これは、「香港人が香港を統治する」という意味を持ちます。この原則は、香港が中国とは異なる体制（民主主義、資本主義など）のもとで「高度な自治」を行うことを中国が認めるという「一国二制度」の概念と深く関連しています。

日本では「一国二制度」の方がよく知られていますが、「港人治港」という言葉は、中国政府によって香港の高度な自治が段階的に骨抜きにされていくという文脈で使われることが多くなっています。この言葉は、香港の自治の現状に対する懸念や批判を表現する際に用いられます。

概要

この原則は、香港返還交渉において、中国の鄧小平が提唱した「四大原則」の一つとして構想されました。この四大原則は、以下の4つから構成されています。

1. 一国二制度: 中国という一つの国家の中に、社会主義体制と資本主義体制という異なる二つの制度が存在することを認める。
2. 香港の高度な自治: 香港は外交と軍事を除く広範な自治権を持つ。
3. 港人治港（香港人による香港統治）: 香港は香港人自身によって統治される。
4. 50年間は従来の資本主義体制を変えない: 香港の資本主義体制は返還後50年間維持される。

これらの原則は、『中華人民共和国香港特別行政区基本法』の基礎となっており、香港特別行政区における自治の根拠となっています。しかし、実際には、行政の長である行政長官は初代の董建華から、中国政府の影響力の強い人物が就任する傾向があり、この状況を揶揄して「京人治港」（「北京の人間が香港を統治する」の意）や「党人治港」（「中国共産党員が香港を統治する」の意）という言葉が使われるようになっています。

変容と現状

近年、「港人治港」の原則は、中国政府の香港への影響力強化によって、その意味が変質しているという見方が強まっています。特に、2019年から2020年にかけての香港民主化デモや、その後の香港国家安全維持法の施行など、中国政府の介入が目立つようになり、香港の自治は著しく制限されています。こうした状況は、「港人治港」の原則が形骸化しているとの批判を招いています。

また、中国政府は近年、「愛国者による香港統治」という新たなスローガンを掲げ、香港の統治において中国共産党への忠誠を重視する姿勢を強めています。これは、「港人治港」の原則のさらなる変質を意味すると考えられています。

まとめ

「港人治港」は、香港の自治を保証する重要な原則として誕生しましたが、現実にはその実現が難しくなりつつあります。中国政府の影響力が増大する中で、香港の自治は危機に瀕しており、この原則は、香港の現状を理解する上で重要なキーワードとなっています。

関連事項

雨傘革命
2019年-2020年香港民主化デモ
* 「愛国者による香港統治」

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