港南台遺跡群

港南台遺跡群の概要

港南台遺跡群（こうなんだいいせきぐん）は、神奈川県横浜市港南区にかつて存在した複数の遺跡を総称するものです。1970年代以前から存在し、特に1966年から1970年代の大規模なニュータウン開発に伴う発掘調査で注目されました。それにもかかわらず、榎戸第2遺跡と松ヶ崎横穴墓群を除き、多くの遺跡が消失してしまいました。

バックグラウンド

港南区は1960年代まで住宅街ではなく、自然豊かな丘陵地帯でした。津久井丘陵の一部を成すこの地域は、多摩丘陵の南端に位置し、当時は鉄道網も整備されていない農村地帯でした。しかし、1960年代の高度経済成長は横浜市全体の人口増加をもたらし、郊外の都市化を加速させました。その結果、日野町は市街地化計画に伴い、大規模な造成工事が行われることとなります。

この急速な都市化により、多くの遺跡が危機にさらされ、開発に先立ちこれらの遺跡を記録・保護するための発掘調査が必要とされました。1976年に出版された発掘調査報告書『港南台』には、発見された遺跡の詳細が記されています。調査では33か所の遺跡が発見されましたが、それらは後に整理され、実際には12の主要な遺跡が明らかとなりました。

発見された遺跡と調査成果

港南台地区の発掘調査は、1969年から1970年にかけて行われ、特に榎戸第2遺跡が最初に調査されました。ここでは、縄文時代中期から古墳時代までの様々な竪穴建物が発見され、出土品には土器や金属器が含まれました。

榎戸第1遺跡

次に調査された榎戸第1遺跡では、縄文中期の集落跡が見つかりました。この遺跡では、馬蹄形に分布している複数の竪穴建物が確認され、当時の生活が伺えました。残念ながら、工事により一部の調査が不能となり、記録の十分な保存が難しい状況もありました。

その後の調査

その後も榎戸第3遺跡や中谷遺跡など、複数の遺跡で発掘調査が行われ、縄文から平安時代にかけての遺構や出土品が確認されています。しかし工事の影響で、一部は発掘が行われる前に破壊される運命にありました。特に榎戸第4遺跡では、学生による遺物の持ち去り事件が発生し、考古学的価値が損なわれました。

現在の状況

都市化が進む中で、港南台地域は現在の住宅地へと姿を変え、かつての面影はほとんど失われています。残された遺跡は少なく、榎戸第2遺跡は「港南台西公園」として保存されていますが、他の遺跡は破壊されるか、失われたままです。松ヶ崎横穴墓群は運良く保存されており、横浜市の文化財として認識されています。

参考文献

• - 川上久夫著、神奈川県教育委員会文化財保護課編『港南台（調査報告）』（1976年）
• - 横浜市三殿台考古館『よこはまの遺跡-1-』（1990年）
• - 横浜市埋蔵文化財センター『埋文よこはま31号』（2015年）

港南台遺跡群は、地域の歴史を掘り起こすための貴重な足跡であり、考古学研究の重要な資源です。この地域に存在した多様な文化や事象は、今後も研究を通じて明らかにされることが期待されます。

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