湘南アイデンティティ

湘南アイデンティティ

西村京太郎の長編推理小説『湘南アイデンティティ』は、2007年に小学館から刊行された作品です。十津川警部シリーズでありながら、鉄道が事件に直接関わらないという珍しい構成が特徴です。物語は、一人の美女と彼女を取り巻く5人の男たちの奇妙な関係を中心に展開し、やがて殺人事件へと発展していきます。

ストーリー

物語は、経済研究所に勤める武藤明が、湘南ライナーの中で小早川恵と名乗る美女から「特定の日、一晩だけ一緒に過ごしてほしい。ただしセックスは無し」という奇妙な契約を持ちかけられる場面から始まります。武藤は月曜日に恵と会い、夢のような時間を過ごします。

恵は同じように、火曜日に精密機器メーカーの重役である川上信彦、水曜日に大手出版社勤務の大杉修、木曜日にベンチャー企業の社長である岸川正典、金曜日に外務省の役人である仲真一郎と、それぞれ契約を結びます。

一方、十津川警部は、ベンチャー企業の社長、岸川正典の秘書・城戸はるかが殺害された事件を捜査していました。秘書が岸川に結婚を迫っていたことから、警察は岸川を疑いますが、証拠は見つかりません。そんな中、謎の人物から「小早川恵と五人の男」に関する調査報告書が十津川警部に送られてきます。

報告書を基に、恵に事情聴取を行った十津川警部に対し、恵は事件当夜、岸川に無理やり言い寄られたものの、一晩中話し合っていたと証言します。

しかし、やがて「セックスなしの関係」に不満を抱いた岸川が、他の曜日の男たちに恵をレイプしようと提案し、事態は思わぬ方向へ進んでいくのです。

登場人物

警視庁捜査一課

十津川省三
亀井定雄

事件関係者

小早川恵：平塚の豪華マンションに住む謎の美女。自称大学院生。
河野圭一郎：私立探偵。田中薫という人物に依頼され、恵と「五日間の男」の生態を調査。
城戸はるか：岸川の秘書。今回の事件の被害者。

五日間の男

月曜日の男：武藤明（30歳） - 日本総合経済研究所勤務。
火曜日の男：川上信彦（30歳） - 精密機器メーカーの専務。
水曜日の男：大杉修（37歳） - 出版社「ザ・サン」の雑誌編集長。
木曜日の男：岸川正典（30歳） - コンピューター会社社長。
金曜日の男：仲真一郎（30歳） - 外務省勤務。

キーパーソン

小早川多恵：恵の妹。過去にレイプ被害に遭い、自殺。
リー・ショーウェイ：過去に暴行を受け殺害された女性。

テレビドラマ

2012年には、『十津川警部シリーズ48・江ノ電に消えた女〜十津川警部への挑戦状〜』として、渡瀬恒彦主演でテレビドラマ化されました。

関連項目

神奈川県
湘南
* 江ノ電

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