湘南モノレール400形電車

湘南モノレールがその運行に用いていた400形電車は、日本の懸垂式モノレール車両の一形式です。1980年（昭和55年）に、将来的な千葉都市モノレール計画における技術的な検証を目的とした三菱重工業製の試験車両として、2両編成1本が製造されました。

車体と外観の特徴

車体構造には軽量化が図られたアルミニウム合金が全面的に採用されています。製造当初は、走行装置である台車部分や床下の機器類を空気抵抗や騒音低減のために覆うカバーが装備されていましたが、日常的な点検や整備作業の効率を考慮して後に撤去されています。塗装デザインは何度か変更が加えられました。登場当初は独自の塗装でしたが、1986年（昭和61年）に中間車として421号車を増結し3両編成化された際に、同時期に主力だった300形電車に合わせた塗り分けに変更されました。さらにその後、車体前面に直線的なデザインを取り入れた塗装に変更され、これは後に登場する500形にも引き継がれていますが、最終的には300形や5000形にも通じる丸みを帯びた「金太郎」スタイルと呼ばれる塗装に戻されました。

客室ドアの窓も改良されています。当初は1枚の大きな窓でしたが、混雑時における窓ガラスの破損が問題となったため、安全対策として窓の中央に桟が追加され、2枚に分割されたような形態となりました。前面のデザインは非常に特徴的で、一般的な鉄道車両とは異なり、前照灯が装備されていませんでした。これは、湘南モノレールの路線が高架構造であり、線路の前方に障害物が出現する可能性が極めて低いという構造上の特性を活かした設計でした。しかし、後に402号車が事故により損傷した際、修繕と同時に灯火類を500形と共通のユニットに交換したため、片側の前面にのみ前照灯が取り付けられることとなりました。

走行装置に関しては、製造当初は路面電車などに使われるような溝のない平たいタイヤが装着されていましたが、湘南モノレール線内の急勾配区間での空転が発生したため、滑り止めの溝が刻まれた500形と同様のタイヤに交換されています。

編成と内部構造

400形は、当初は運転台付きの制御電動車である401号車と402号車の2両編成でしたが、1986年に湘南モノレールでは唯一の付随車となる中間車421号車が増備され、3両編成となりました。この増備された421号車は、先頭車と比べて全長が短く、客室窓の形状や配置、高さにも違いが見られました。

車内インテリアは、後に登場する500形にも採用された暖色系の配色を基調としていました。500形の内装と比較すると、400形では座席の背ずりの高さが高く、それに伴って窓の取り付け位置も高くなっているという差異がありました。また、座席の配置と窓の位置が一部で合っていない箇所が見受けられました。これは、登場当時は全ての座席が線路と並行に配置されるロングシートだったものを、後に一部を線路と垂直に配置するセミクロスシートに改造した際に生じたものです。ただし、中間車の421号車は製造当初からセミクロスシートが採用されており、設計段階で窓割りとの整合性が図られていたため、このズレは発生していませんでした。先頭車の運転台に最も近い妻面部分には、新製当時のままの2人掛け座席が残されていました。なお、500形の一部車両で行われた、ドア付近のロングシートを折りたたみ可能な縦向きの跳ね上げ座席に改造する更新は、400形には施工されませんでした。

湘南モノレールの車両は全体的に天井が低い構造のため、利用客が頭をぶつけないように、ドア付近の天井照明（蛍光灯）には保護カバーが取り付けられていますが、400形では車内全ての蛍光灯にカバーが設置されていました。冷房装置は搭載されておらず、夏期は窓を開けて換気する構造でした。運用末期には、窓や車体側面に「非冷房車」であることを示す掲示が貼られていました。

運用と引退

冷房非搭載であったことなどから、運用上の制約があり、特に後年は予備的な車両として位置づけられ、定期的な営業運転に充当される機会は減少していきました。そして、後継となる新型車両5000系の登場に伴い、2004年（平成16年）7月4日をもって営業運転を終了し、全車が廃車となりました。廃車後、401号車は製造元の三菱重工業の施設でしばらく保管されていましたが、最終的には解体されています。

湘南モノレールの発展において、技術試験車両としての役割を果たし、その後の形式にも影響を与えた400形電車は、短命ながらも特徴的な車両として歴史に名を残しています。

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