湯口栄蔵

湯口栄蔵：メキシコ五輪銅メダリスト、不遇のサッカー人生

湯口栄蔵（ゆぐち えいぞう）は、1945年大阪市に生まれ、2003年に57歳で生涯を閉じた元サッカー選手です。ポジションはミッドフィルダー。その選手生活は、メキシコシティオリンピックでの銅メダル獲得という輝かしい実績と、その裏に隠された複雑な事情によって彩られています。

学生時代から日本代表へ

湯口は、関西大学在学中からその才能を開花させ、日本代表に選出されます。大学卒業後は、当時強豪であったヤンマーディーゼルサッカー部（現セレッソ大阪）に所属し、選手としてのキャリアを積み重ねていきました。

メキシコシティオリンピックと「0-0の指令」

湯口の名を最も有名にしたのは、1968年のメキシコシティオリンピックでの出来事でしょう。日本代表は快進撃を続け、見事銅メダルを獲得しますが、その裏には知られざるエピソードが存在します。

一次リーグのスペイン戦、0対0で迎えた後半30分、湯口は途中出場を命じられます。この時、長沼健監督から「点を取るな。0-0で終われ」という指示を受けたのです。これは、同組のブラジルが敗戦濃厚であり、勝利すると決勝トーナメントで地元メキシコと対戦する可能性が高まるという状況を考慮したものでした。湯口は、この指示を受け、見事（？）に無得点のまま試合を終え、チームは準々決勝でフランスと対戦することになったのです。

このエピソードは、勝利至上主義に対する批判や、スポーツマンシップのあり方を問う議論を呼びました。湯口自身は、この件について多くを語ることはありませんでしたが、複雑な思いを抱えていたことは想像に難くありません。

引退後と晩年

国際Aマッチ5試合1得点という記録を残し、湯口は現役を引退します。その後は、近畿大学サッカー部の監督を務め、指導者として後進の育成に尽力しました。

しかし、2003年2月2日、湯口は胃癌のため奈良市で死去。57歳という若さでした。メキシコシティオリンピックの銅メダリストという輝かしい肩書きを持つ一方で、「0-0の指令」という複雑な背景を背負った湯口栄蔵。そのサッカー人生は、栄光と苦悩が入り混じったものだったと言えるでしょう。

プレースタイル

ミッドフィルダーとして、献身的なプレーでチームを支えました。特筆すべきは、豊富な運動量と戦術眼。中盤でボールを奪取し、攻撃の起点となるプレーを得意としていました。

指導者として

近畿大学サッカー部の監督としては、選手の自主性を重んじる指導を行いました。勝利至上主義に陥らず、選手の成長を第一に考える姿勢は、多くの選手から尊敬を集めました。

所属クラブ

明星高等学校
関西大学
1968年-1972年 ヤンマーディーゼルサッカー部

代表歴

メキシコシティオリンピック（銅メダル）
1970 FIFAワールドカップ・アジア・オセアニア予選
1970年アジア競技大会におけるサッカー競技
* 国際Aマッチ 5試合 1得点(1969-1970)

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