湯本文彦

湯本文彦（ゆもと ふみひこ）

湯本文彦（1843年7月4日 - 1921年9月25日）は、幕末から大正にかけて活躍した日本の歴史家です。鳥取藩士の家に生まれ、幼少期から儒学を学びました。維新後、教育者、史料編纂者として才能を発揮し、特に平安京の再現研究において顕著な業績を残しました。

経歴

鳥取藩士として

湯本は天保14年（1843年）に鳥取藩士の長男として生まれました。幼名は増之助。幼少の頃から堀敦斎らに儒学を学び、安達清風とも交流しました。藩の学館である尚徳館では句読頭を務め、藩主の上京に随行するなど、藩の要職を歴任しました。

明治維新後

明治維新後、湯本は神職を経て、島根県に招聘されます。県史編纂事業に携わり、修史科長兼秘書御用係、学務課長を歴任しました。その後、松江中学校長、松江師範学校長を兼任するなど、教育者として手腕を発揮しました。短期間米子中学校長も務めています。

京都での活動

1888年（明治21年）に京都府に奉職。庶務課勤務を経て、京都市美術工芸学校教授、東京帝国大学史料編纂員主事、京都帝室博物館学芸委員などを歴任しました。京都市参事会『平安通志』編纂委員会主事、池田侯爵家『鳥取藩史』編纂長も務めました。京都を拠点に、歴史研究、教育、文化事業に尽力しました。

1915年（大正4年）に病のため官を退き、1921年（大正10年）に京都市の自宅で亡くなりました。墓所は自らが選んだ愛宕郡下鴨村共同墓地です。

業績

湯本文彦の最大の功績は、平安京の再現研究にあります。京都市街図上に平安京を再現し、寺社や邸宅の位置を比定した『平安通志』は、平安京研究における重要な基礎資料となっています。その他、『和気公紀事』『京都府寺誌稿』『京職沿革略考』など、京都に関する著作を多数発表しました。また、『鳥取藩史』の編纂長として、藩史の編纂にも尽力しました。

主な著書

『平安通志』（1895年）
『和気公紀事』（1899年）
『京都府寺誌稿』（1902年）
『京職沿革略考』（1907年）
『京華林泉帖』（1909年）
『京都府愛宕郡村志』（1911年）
『日本政権競争史』（1911年）
『鳥取藩史』（1933年）

栄典

湯本は、その功績により、勲八等瑞宝章、勲七等瑞宝章、勲六等瑞宝章を受章しました。

人物

湯本文彦は、歴史研究に対する情熱と、教育者としての使命感に溢れた人物でした。緻密な考証に基づいた研究成果は、後世の研究者に大きな影響を与えています。また、教育者として多くの人材を育成し、地域文化の発展に貢献しました。

参考文献

山中寿夫「鳥取藩史編纂と湯本文彦の史学思想」『鳥取大学学芸学部研究報告（人文科学）』第11巻第2号、鳥取大学学芸学部、1960年11月。
角田文衛「解説」『平安通志』新人物往来社、1977年6月。
『昭和五十六年度 資料調査報告書第九集 ―湯本文彦関係資料―』鳥取県立博物館、1982年3月。
小林丈広「『平安通志』の編纂と湯本文彦 十九世紀末京都における「知」の交錯」『明治維新と歴史意識』吉川弘文館〈明治維新史研究7〉、2005年4月。
伊東宗裕「湯本文彦の遺稿について」『立命館文學』第542号、立命館大学人文学会、1995年12月。

外部リンク

とっとりデジタルコレクション--湯本文彦
* 湯本文彦と平安遷都千百年紀念祭 – 京都府立総合資料館デジタル展覧会

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