湯涌谷村

湯涌谷村（ゆわくだにむら）

湯涌谷村は、かつて日本の石川県石川郡に存在した村です。現在は金沢市の一部となっています。この村は、金沢市の東部、清流として知られる浅野川の上流、その西岸に広がる山間地域に位置していました。古くからこの一帯は、戦国時代には「湯涌谷」と呼ばれ、江戸時代には「湯涌郷」として知られていた歴史を持ちます。

地域の特徴として、特に有名なのが「金沢の奥座敷」として親しまれる湯涌温泉です。湯涌谷村は、この湯涌温泉を中心として栄えた村でした。湯涌温泉のほかにも、村内には曲水温泉（きょくすいおんせん）といった温泉地があり、豊かな自然環境の中で人々を癒してきました。村の周囲には、順尾山（じゅんのやま）、吉次山（きちじやま）、高尾山（たかおやま）といった山々が連なり、四季折々の美しい景観を呈しています。

近代における湯涌谷村の歴史は、1889年（明治22年）4月1日に施行された町村制によって始まります。この時、石川郡内にあった舘村（たちむら）、茅原村（ちはらむら）、七曲村（ななまがりむら）、西市瀬村（にしいちせむら）、下谷村（しもだにむら）、白見村（しろみむら）、羽場村（はばむら）、上原村（かんばらむら）、畠尾村（はたおむら）、田子島村（たごじまむら）、湯涌村（ゆわくむら）、上荒屋村（かみあらやむら）、曲村（まがりむら）、そして河内村（こうちむら）の14村が合併し、新たに石川郡湯涌谷村として発足しました。

村の発足後、その区域には一部変更がありました。1891年（明治24年）11月21日には、湯涌谷村を構成する大字（おおあざ）の一つであった舘の区域が、隣接する石川郡崎浦村（さきうらむら）へ編入されています。これにより、湯涌谷村の範囲がわずかに変更されました。

その後、湯涌谷村は自治体として存続していましたが、1954年（昭和29年）7月1日、金沢市に編入されることとなりました。この合併により湯涌谷村はその行政上の歴史に幕を閉じ、その領域は金沢市の一部となりました。金沢市への編入に際しては、旧湯涌谷村の大字は基本的に金沢市の町名として引き継がれました。しかし、一部で名称の変更が行われています。例えば、大字上荒屋は「湯涌荒屋町（ゆわくあらやまち）」に名称が改められました。また、田子島、曲、河内といった大字は、金沢市の町名になる際に旧村名である「湯涌」を冠する形で継承されています。

現在の金沢市において、かつての湯涌谷村だった地域は、主に住居表示がまだ実施されていない地域として名を残しています。現在の町名としては、白見町、上原町、湯涌町、湯涌田子島町、湯涌荒屋町、湯涌河内町、湯涌曲町、畠尾町、茅原町、七曲町、西市瀬町、下谷町、羽場町などがあります。これらの町名が、かつての湯涌谷村の区域を示しており、村の歴史を今に伝えています。

湯涌谷村の変遷は、石川県の市町村の歴史を辿る上で興味深い事例です。より広範な地域の行政区画の変更について知りたい場合は、「石川県の廃止市町村一覧」などを参考にすると、より深く理解できるでしょう。

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