湿球温度

湿球温度とは

湿球温度（しっきゅうおんど、英: wet-bulb temperature）は、空気と水蒸気が混ざった気体の状態を示す指標となる温度です。いくつかの定義が存在しますが、いずれも湿度と温度の関係を表す重要な値です。

湿球温度の種類

湿球温度には、主に以下の3つの種類があります。

熱力学的湿球温度 (thermodynamic wet-bulb temperature)
空気塊を一定圧力下で、水分の蒸発によって飽和するまで断熱的に冷却した際の温度です。蒸発に必要な熱は全て空気塊から供給されます。
乾湿計の湿球温度
湿ったガーゼで覆われた温度計（湿球）で測定した温度です。水分の蒸発により、通常は乾球温度よりも低い値を示します。
断熱的湿球温度 (adiabatic wet-bulb temperature)
空気塊を断熱的に冷却して飽和させた後、湿潤断熱過程で元の気圧まで戻したときの温度です。

湿球温度の重要性

湿球温度は、以下の点で重要です。

湿度との関係
乾球温度と湿球温度の差から、相対湿度を推定できます。湿度が低いほど、蒸発が盛んになるため、湿球温度は乾球温度よりも大きく低下します。
冷却効果の指標
水分の蒸発による冷却効果を示すため、空調や冷却塔の効率評価に用いられます。
人体の熱放散への影響
汗の蒸発による人体の冷却は、湿球温度が高いほど抑制されます。そのため、湿球温度は熱中症のリスク評価に用いられます。

熱力学的湿球温度の詳細

熱力学的湿球温度は、空気と水蒸気の混合気体の熱力学的な性質を示すものです。理想的な条件下では、湿球温度計の読み取り値は熱力学的湿球温度の近似値となります。

湿球温度計の読み取り値

湿球温度計は、球部を湿ったガーゼで覆った温度計です。ガーゼが常に湿った状態に保たれることで、水分の蒸発が起こり、温度が低下します。ただし、測定環境によっては、熱力学的湿球温度とは若干異なる値を示すことがあります。

断熱的湿球温度の詳細

断熱的湿球温度は、空気塊が断熱的に冷却される過程を考慮した温度です。高度が上昇するにつれて気圧が下がる状況などで重要になります。

生存限界の暑さ

近年、地球温暖化の影響により、世界各地で記録的な猛暑が観測されています。湿球温度が35℃を超えると、健康な若者でも数時間で生命の危機に晒される可能性があります。一部地域では既にこの水準に達しており、今後の温暖化の進行によっては、より広範囲で同様の状況が発生する恐れがあります。

まとめ

湿球温度は、空気と水蒸気の混合気体の状態を示す重要な指標です。湿度、冷却効果、人体の熱放散など、様々な側面から私たちの生活に関わっています。地球温暖化が進む現代において、湿球温度を理解し、適切な対策を講じることがますます重要になっています。

関連項目

湿度
湿球黒球温度 (WBGT)
乾球温度
露点温度
冷却塔
乾湿計
* 大気熱力学

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