満洲国の警察

満洲国における警察制度

満洲国における警察制度は、従来の奉天派軍閥の警察制度が抱えていた問題点を解消し、秩序ある社会の実現を目指して構築されました。日本の指導の下、中央から地方まで緻密な組織が作られ、警察官の行動規範となる「警察綱領」も制定されました。

概要

満洲国成立以前、満洲地域を支配していた奉天派軍閥は独自の警察制度を持っていましたが、警察官の質の低さから民衆の不満が募っていました。満洲国成立後、日本の指導により、規律ある新しい警察組織「満洲国警察」が構築されることになります。

中央政府には「警務司」が設置され、満洲国内の全ての警察を統括する役割を担いました。地方においては、各省に「警務庁」が置かれ、新京特別市には「首都警察庁」が設けられました。主要都市には「警察局」や「警務処」が配置され、その他の市・県・旗には「警務科」が置かれるなど、隅々まで警察機構が整備されました。

また、海上警察として「海上警察隊」も組織され、海上の治安維持に当たりました。

沿革

満洲国警察は、以下の様な変遷を辿りました。

1932年（大同元年）3月: 満洲国民政部に「警務司」が設置され、各省に「警務庁」が設けられました。
1932年（大同元年）6月: 新京に「首都警察庁」が設置されました。
1934年（康徳元年）3月: 帝政に移行し、愛新覚羅溥儀が皇帝に即位しました。
1937年（康徳4年）7月: 警務司が満洲国治安部に移管されました。
1937年（康徳4年）12月: 日本に対する治外法権が撤廃されました。
1939年（康徳6年）12月: 全警察官の行動規範となる「警察綱領」が制定されました。
1943年（康徳10年）4月: 治安部が廃止され、新たに「警務総局」が設置されました。

組織

満洲国警察の組織は、中央の警務司、警務総局から地方の警察機関まで、詳細に区分されていました。以下に、それぞれの組織構成を解説します。

警務司の組織 (1940年時点)

参事官室
警務科:
総務股、人事股、経理股、企画股
警備科:
警備股、防空股、通信股、銃器股
特務科:
特務股、思想股、検閲股
保安科:
保安股、交通股、経済保安股
刑事科:
刑事股、防犯股
教養科:
教養股、教材股
兵事恩賞室

警務総局の組織 (1943年時点)

官房:
参事官室、総務科、経理科、教養科、兵事恩賞室
警務処:
警備科、防空科、通信科、保安科、刑事科、経済保安科
特務処:
特務科、特高科、外事科



満洲国警察官には階級が設けられていました。

警察綱領

1939年12月に制定された「警察綱領」は、満洲国警察官の精神的支柱となる行動規範であり、以下の項目から構成されます。

1. 警察官は王道具現の先駆たるべし
2. 警察官は民族協和の中核たるべし
3. 警察官は義勇を尚び正義を擁護すべし
4. 警察官は規律を重んじ融和団結すべし
5. 警察官は誠実を旨とし責任を果たすべし
6. 警察官は廉潔を尚び公平無私たるべし
7. 警察官は修養に努め人格を陶冶すべし

この綱領は、警察官が職務を遂行する上での心構えを示し、満洲国の治安維持に重要な役割を果たしました。

制服

満洲国警察の制服は、時代や所属によって異なっていましたが、概ねカーキ色を基調としたものが用いられていました。

参考資料

満洲国民政部警務司『満洲国警察概要』(康徳2年10月) アジア歴史資料センターレファレンスコード:A05020355600
満洲国治安部警務司『満洲国警察概要』(康徳7年11月) アジア歴史資料センターレファレンスコード:A05020355400

関連項目

満洲国
* 日本における検閲

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