準備書面

準備書面の概念と役割

準備書面（じゅんびしょめん）は、日本の民事訴訟において極めて重要な文書です。これは、口頭弁論の際に自らの主張を明らかにし、それに関連する攻撃防御方法を整理するために作成されます（民事訴訟法161条）。具体的には、自らの主張と、相手の請求や攻撃に対する反論や答弁を記載した文書です。準備書面の目的は、法廷での主張をスムーズに進めるための対策として機能します。

民事訴訟における口頭主義

日本の民事訴訟では、当事者は口頭で自己の主張を行うことが原則とされています（87条1項）。しかし、複雑な事案が多くなる中で、裁判所や相手方にその内容を正確に伝えるのは困難であり、また後に上訴があった場合には再度の口頭での説明を要することが、訴訟経済に反することになります。このような問題を解決するため、日本の民事訴訟法は「口頭弁論は書面で準備しなければならない」という書面主義を採用しています（161条1項）。このルールに従い、提出される書類が準備書面となるのです。

簡易裁判所における特例

簡易裁判所では、迅速な審理が求められるため、口頭弁論においても書面を用意する必要がないとされています（276条1項）。これは、債権者が支払督促を行った後、債務者から異議があった場合にも当てはまり、通常訴訟に移行する際には準備書面が「訴状に代わる準備書面」として用いられます。

準備書面の内容と提出方法

準備書面には、まず自らの攻撃防御方法（161条2項1号）を記入し、次に相手方の請求に対する陳述（161条2項2号）が必要です。なお、単純否認を行うことはできず、否認の理由を明確に記載する義務があります（規則79条3項）。

提出に関しては、原則として準備書面を相手方に直接送付し、同時に裁判所にも提出しなければなりません。相手方は受領書を準備書面を差し出した者に送り返し、裁判所へも提出する必要があります（規則83条）。提出時期についても、相手方が内容に応じた応答準備をできるように配慮する必要があります（規則79条1項）。

提出の効果

口頭弁論の際、相手方が欠席した場合は、提出済みの準備書面に記載された事実のみ主張することができます（161条3項）。これは、不意打ちを回避し、相手方に公平な機会を与えるためです。また、第1回口頭弁論に出席していない当事者が準備書面を提出していた場合、その内容が陳述されたものと見なされ、相手方はその内容について弁論することができます（158条）。

準備書面の有効性

ただし、準備書面を提出しただけでは、それが口頭での主張と認められません。実際には、当事者が口頭弁論でその内容を明言するか、裁判所がその旨をみなすことで、初めて準備書面が主張として成立します。通常、裁判官から「陳述しますか？」という問いかけに対し、「（準備書面のとおり）陳述します。」と答えることで、それが正式に主張として扱われます。

結論

準備書面は、日本の民事訴訟における口頭弁論の効率化と正確性を高めるために欠かせない要素です。準備書面を適切に作成・提出し、その内容を明確に陳述することが、訴訟の結果に大きな影響を与えることがあります。したがって、法廷での自身の立場を強化するためにも、準備書面の重要性を十分に理解しておくことが必要です。

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