訴状

訴状（そじょう）とは

訴状とは、民事訴訟（または人事訴訟）を裁判所に提起する際に、原告が訴えの内容を記載して提出する公式な書面のことです。この訴状に基づいて、裁判所は訴訟の審理を開始し、判決を下します。

日本法における訴状

概要

日本の民事訴訟手続きにおいて、訴状は、原告が裁判所に対し、特定の争いについて判断を求めるために作成・提出する書類です。訴えの提起には、必ず訴状を裁判所に提出する必要があります（民事訴訟法133条1項）。

訴状は、裁判所への正本に加え、相手方である被告の人数分の副本を添付する必要があります。また、訴状提出時には、手数料を収入印紙で納付し、訴訟費用の概算額に相当する郵便切手を予納します。

必要的記載事項

民事訴訟法133条2項により、以下の事項は訴状に必ず記載しなければなりません。

1. 当事者および法定代理人の表示：原告と被告の氏名（法人の場合は名称）と住所を正確に記載します。通称や芸名でも、当事者が特定できれば差し支えありません。
2. 請求の趣旨：原告が求める判決内容を具体的に記載します。これは、原告が実体法上有する権利の範囲内で自由に設定できます。裁判所は、この請求の趣旨を上限として判決を下します。
3. 請求の原因：訴訟物を特定するために必要な事実関係を記載します。特に、給付訴訟や形成訴訟では、請求の趣旨だけでは請求内容が明確にならないため、詳細な記載が必要です。請求の原因の末尾には、訴訟物を端的に明らかにする結論部分（「よって書き」と呼ばれる）を記載することが一般的です。

実質的記載事項

原告またはその代理人の郵便番号および電話番号（ファクシミリの番号を含む）を記載する必要があります（民事訴訟規則53条4項）。これは、裁判所からの連絡を円滑にするためです。また、請求の原因には、請求を理由づける攻撃防御方法としての機能もあり、関連する事実や法律要件を記載する必要があります（民事訴訟規則53条1項）。

添付書類

訴状には、証拠となる書類の写しを添付することが求められています（民事訴訟規則53条、55条）。不動産に関する訴訟では、対象物件の登記事項証明書を添付する必要があります。

裁判長の訴状審査権

裁判長は、訴状に不備がある場合（当事者や請求が特定されていない、収入印紙の不足など）には、補正命令を発することができます（民事訴訟法137条1項）。原告が補正命令に従わない場合、裁判長は訴状を却下します（民事訴訟法137条2項）。

訴状の送達

訴状は、原告が提出した副本によって被告に送達されます（民事訴訟規則58条1項）。

書面によらない訴えの提起

簡易裁判所では、口頭で訴えを提起することも可能です（民事訴訟法271条、273条）。

当事者の確定

氏名冒用訴訟など、当事者の確定が問題となる場合、訴状の記載を基準とするのが通説的な見解です。

海外における訴状（アメリカ）

アメリカの連邦法における訴状は、原告の被告に対する請求と、裁判所に求める法的救済を記載した書面です。訴状の記載は簡潔でよく、請求を基礎付けるに足る程度の詳細さがあれば十分です。

アメリカでは、「ノーティス・プリーディング（Notice pleading）」制度が採用されており、訴状において詳細な事実の記載は要求されません。これは、訴訟の過度な技術化を避け、実体的正義の実現を優先するためです。

関連情報

訴状に関連する情報として、以下の項目も参照ください。

送達
当事者
訴訟物
証明責任
準備書面
答弁書
支払督促
電子情報処理組織による申立て
人事訴訟法
家事審判
控訴
上告

民事訴訟を提起する際には、訴状の作成が不可欠です。訴状の記載内容や手続きに不備があると、訴訟が円滑に進まない可能性があります。必要に応じて、弁護士などの専門家にご相談ください。

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