溝口直養

溝口直養（みぞぐち なおやす）

溝口直養は、1736年に越後国新発田藩の7代藩主・溝口直温の長男として生まれました。彼は母方の家柄が側室であったため、幼少時は庶子として扱われ、世子とは見なされていませんでした。しかし、弟が病気になったことを受けて1760年に世子となり、同年に正式に将軍にお目見えしました。

直養は1761年に父の隠居に伴い家督を継ぎ、以後新発田藩の政治を担っていきます。彼はその治世を「安永の治」と称され、積極的な財政改革や教育奨励を進めました。特に、学問を重んじ、自らも学問に励む姿勢が評価されています。

治世と政策

直養は治世において直面した財政難に対して、様々な改革を行いました。上知された村々の返還や、土地の調査を実施し、農民への負担を軽減することに努めました。特に、万雑税の改革により農村の救済を図り、貧困層への支援に取り組んだ点が時代背景の中でも特筆されます。彼はまた、領内での法律整備にも尽力し、安定した社会基盤を築くことを目指しました。

また、直養は藩校を設立し、藩内の学問を奨励しました。1772年には藩校「講堂」を設立し、百姓や町人に対しても教育の機会を提供しました。この教育政策は、直養の思想を反映したものであり、藩内の知識層の育成を目指していました。

直養自身の著作としては『勧学筆記』があり、これは学問の重要性を説いたものです。彼はまた、医療にも力を入れ、医学館を設立し、庶民のための医療を担う施薬方を設置しました。これにより、病に苦しむ人々への支援体制も整えられました。

医療以外にも、祖先を祀るための祠堂を設け、藩の伝統や文化を尊重しながら、歴代藩主を顕彰しました。これらの取り組みは、藩の精神的な支柱となり、直養の治世を特色づける重要な要素となりました。

私生活と家族

直養は、正室を持たない一方で、数名の側室を置き、合計4男9女が誕生しました。父親として、彼は子女教育にも関心を持ち、藩内の教育環境を整えることで、次世代の指導者となる人材を育てることにも尽力しました。彼の二男・峯次郎や三男・永之進は知られるように、直養の家系はその後も藩内で影響力を保持していきます。

直養が晩年に入ると、健康上の理由から1786年に隠居しますが、養子であった直侯の家督を後見する役割も務め、家族の未来を見守りました。直養は1797年に62歳で亡くなり、その法号は永照霊光院でした。

評価と継承

直養の治世は、学問奨励と財政改革を通じて新発田藩の中興を成し遂げた点で高く評価されています。特に、彼が進めた教育政策は歴史に名を刻み、後の時代に大きな影響を与えました。1933年には従三位が追贈され、彼の功績が正式に認められることとなりました。直養の生涯は、江戸時代中期における大名の模範として後世に語り継がれています。

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