溝渕増巳

溝渕増巳について

溝渕増巳（みぞぶち ますみ）は、1900年（明治33年）11月28日に生まれ、1984年（昭和59年）1月17日に没した、日本の内務官僚、政治家です。特筆すべきは、小学校卒業という最終学歴ながら、独学で難関の高等試験行政科に合格し、内務官僚の道を進んだことです。その後、高知県知事として5期20年という長きにわたり県政を担い、多大な貢献をしました。

生い立ちと内務官僚への道

溝渕増巳は、小学校卒業後、22歳で大阪府警察部の巡査となります。警察官としての職務をこなしながら、独学で勉学に励み、28歳という若さで高等試験行政科に合格しました。この試験は、今日の国家公務員採用総合職試験に相当するもので、合格は非常に困難でした。この偉業により、溝渕は内務官僚としてのキャリアをスタートさせました。

高知県知事としての活躍

1955年（昭和30年）には、公選により高知県知事に就任し、その後5期連続で当選、1975年（昭和50年）までの20年間、高知県政を牽引しました。在任中は、県政の発展に尽力し、数々の実績を残しました。

多様な活動

溝渕増巳は、高知県知事としての活動以外にも、様々な分野で活躍しました。

1958年（昭和33年）には、財団法人土佐育英協会を設立し、初代理事長に就任しました。これは、高知県の教育振興に貢献するための活動でした。
1965年（昭和40年）には、ブラジルを訪問し、国際交流にも尽力しました。
1968年（昭和43年）には、明治100年を記念して「明治青年隊」を結成し、高知県のよさこい祭に15回も参加しました。これは、県民との交流を深めるための活動でした。
1974年（昭和49年）には、中国を訪問し、中国残留孤児との面談を行いました。これは、戦争の悲劇を風化させないための活動でした。
1975年（昭和50年）には、フィリピン共和国ベンゲット州と高知県の姉妹県州協定を締結しました。これは、国際的な友好関係を築くための活動でした。
1976年（昭和51年）には、長年の功績が認められ、勲一等瑞宝章を受章しました。

エピソード

溝渕増巳の人物像を語る上で欠かせないのが、早明浦ダム建設に関するエピソードです。ダム建設時に、「四国はひとつ」という開発スローガンが石碑に刻まれる予定でしたが、溝渕は開発一辺倒のスローガンに反対し、「四国のいのち」に変更させました。これは、自然環境を大切にする溝渕の姿勢を表すエピソードとして知られています。

著作

溝渕増巳は、自身の経験や考えをまとめた著作も残しています。

『民衆処遇の誡』（1937年）
『日本警察』（1939年）
『巡査の記録』（1950年）
『県政二十年』（1977年）

これらの著作は、溝渕の思想や活動を知る上で貴重な資料となっています。

まとめ

溝渕増巳は、小学校卒業という学歴ながら、その後の努力と才覚で内務官僚、そして高知県知事として大きな功績を残した人物です。彼の生涯は、努力次第でいかなる困難も乗り越えられることを示しています。また、県民との交流を大切にし、国際的な視野を持ち、自然を愛する人物であったことが、多くの活動からうかがえます。

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