溝端佐登史

溝端 佐登史

日本の経済学者である溝端 佐登史氏（みぞばた さとし）は、1955年に大阪府で生を受けました。長年にわたりロシア経済や比較経済体制を主要な研究対象とし、京都大学経済研究所で要職を務めた後、同大学の名誉教授に就任しました。

氏の学歴は、1979年に大阪外国語大学ロシア語科を卒業したことに始まります。その後、京都大学大学院経済学研究科の経済政策学博士課程に進みましたが、1987年にこれを中途退学しました。しかし、研究活動は精力的に継続され、1997年には論文「ロシア経済・経営システム研究 ソ連邦・ロシア企業・産業分析」によって経済学博士の学位を取得しています。

教育・研究者としてのキャリアは、博士課程中退と同年の1987年に岐阜経済大学の講師としてスタートしました。同大学で助教授に昇進した後、1991年には京都大学経済研究所に移籍しました。京都大学では助教授、そして教授へと昇任し、最終的には同研究所の所長も務めるなど、中心的役割を担いました。

溝端氏の研究は、ソ連邦崩壊後のロシアにおける経済システムや経営の変容、特に市場経済への移行プロセスとそれに伴う企業・産業構造の変化に焦点を当てています。博士論文のテーマも、まさにソ連末期からロシア初期にかけての企業と産業の詳細な分析でした。この分野における深い洞察は、多くの著作として結実しています。

主著の一つである『ロシア経済・経営システム研究 ソ連邦・ロシア企業・産業分析』は、博士論文を基礎としたもので、この時期のロシア経済を理解する上で重要な文献です。また、共編著として、『ロシア経済』や『市場経済移行論』、『現代ロシア経済論』など、ロシア経済や比較経済論に関する研究成果を幅広く発表しています。さらに、『ロシアのビッグビジネス』や、多様な経済体制下での経営学を論じた『市場経済の多様化と経営学』なども手掛けており、その研究領域の広さを示しています。

学術界における活動も活発で、ロシア・東欧学会では2009年に副代表理事に就任し、2015年には代表理事を務めました。また、比較経済体制学会でも2019年に代表幹事を務めるなど、関連学会の発展に貢献しています。

翻訳活動も氏の重要な業績の一つです。デービッド・レーンの『ロシアのエリート 国家社会主義から資本主義へ』や『国家社会主義の興亡 体制転換の政治経済学』、スレイマン・イブラヒム・コーヘンの『国際比較の経済学 グローバル経済の構造と多様性』、コルナイ・ヤーノシュの『資本主義の本質について イノベーションと余剰経済』など、海外の重要な経済学者の著作を日本に紹介する役割も果たしています。

これらの多岐にわたる研究活動と教育への貢献が認められ、2021年には京都大学名誉教授の称号を授与されました。溝端佐登史氏は、特に転換期にあったロシア経済の研究において、日本における第一人者の一人として学術界に大きな足跡を残しています。

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