滴滴出行

DiDi（ディディ）とは

DiDi（滴滴出行、Didi Chuxing）は、中国の北京に本社を置く、世界有数の配車サービス企業です。5億5000万人以上のユーザーと数千万人のドライバーを抱え、タクシー手配、自家用車手配、ライドシェア、自転車シェアリングなど、幅広い交通サービスをアプリを通じて提供しています。また、オンデマンド配送サービス、自動車販売・リース、融資、メンテナンス、車両運用、電気自動車充電、自動車メーカーとの共同開発など、自動車関連サービスも展開しています。

日本では、ソフトバンクとの合弁会社であるDiDiモビリティジャパンが2019年からサービスを提供しています。

企業概要

DiDiは、かつて「嘀嘀打车（Didi Dache）」と「快的打车（Didi Kuaidi）」という競合企業同士が合併して誕生しました。2016年6月時点での企業価値は約280億ドルと評価され、同年8月にはUberの中国事業を買収。これにより、企業価値は500億ドル相当と推定され、中国のインターネット大手3社（アリババ、テンセント、百度）すべてから投資を受ける唯一の企業となりました。2017年には、55億ドル以上の資金調達を達成し、世界でも有数の価値を持つテクノロジー企業の一つに数えられています。

DiDiは、2015年に14億回の乗車回数を記録し、2016年には1日平均2000万回以上の利用がありました。これは、創業から6年で10億回を達成したUberを大幅に上回るもので、世界で最も支配的なライドシェア企業としての地位を確立しました。

しかし、2018年には殺人事件が2件発生し、過去には強姦事件も多数報告されるなど、運転手による犯罪の多さや、会社側の対応の不十分さが問題視されました。また、2021年には個人情報の無断収集問題が発覚し、中国政府機関によってアプリが国内のアプリストアから削除されるなど、個人情報管理に関する問題も発生しています。

歴史

嘀嘀打车 (2012年6月～2015年2月)

2012年6月、程維が「小桔科技（オレンジ・テクノロジー）」を設立し、DiDiの前身である配車サービスアプリ「嘀嘀打车」を開始しました。当初はタクシーの即時配車サービスでしたが、後に翌日のタクシー予約も可能になりました。2013年にはシリーズBの資金調達を完了し、翌年にはシリーズCも完了しました。同年、ゴールドマンサックスの元幹部である柳青（ジーン・リウ）がCOOとして入社し、翌年には社長に就任しました。

嘀嘀快的 (2015年2月～2015年9月)

2015年2月、「嘀嘀打车」（テンセント支援）と「快的打车」（アリババグループ支援）が合併し、「嘀嘀快的」が誕生しました。当時、「嘀嘀打车」は中国のスマートフォンベースのタクシー配車サービス市場の55%を占め、「快的打车」が残りの市場シェアのほぼすべてを握っていました。しかし、価格競争による損失が増加し、2015年に合併に至りました。合併後も、両社は別々の経営チームで運営されました。

2015年5月には、10億人民元（1億6100万ドル）を投じ、競合他社に対して優位に立つためのプロモーションや広告活動を行いました。また、基本のタクシー配車サービスに加え、乗り合い、高級車配車、指定ドライバー雇用、障害者向けサービスなどの機能も追加されました。2015年6月には、配車サービス市場の80.2%を占めるに至りました。2015年7月には、20億ドルの資金調達を完了し、手元資金は35億ドル以上に増加しました。

2015年には、東南アジアの配車サービス「Grab Taxi」にも投資しました。

滴滴出行 (2015年9月から)

2015年9月、「嘀嘀快的」は「滴滴出行（DiDi Chuxing）」にリブランドされました。同年12月以降、Grab、Lyft、Ola、99と提携し、各アプリユーザーが他のネットワークの配車サービスを利用できるようにしました。

2016年初頭から、中国に進出したUberとの間で激しい価格競争が始まりました。Uberは中国事業で年間10億ドル以上の損失を出していたにも関わらず、市場シェアを確保しようとしました。しかし、DiDiは中国の400以上の都市のうち半分以上で損益分岐点を越えていたと主張しました。

2016年6月には、Apple、中国人寿保険、アント・フィナンシャルなどから45億ドルの資金調達を完了しました。同年8月1日には、Uberの中国事業を350億ドルで買収しました。これにより、Uberは合併会社の株式5.89%を取得し、DiDiもUberの少数株を取得しました。契約に基づき、程維はUberの取締役に、トラビス・カラニックはDiDiの取締役に就任しました。

2017年3月には、ソフトバンクグループがDiDiの自動運転技術を支援するために60億ドル相当の投資を検討していると報道され、同年4月には、グローバル戦略とAI技術への投資のために55億ドルの資金調達を完了しました。2018年には、トヨタ自動車の「eパレット」のパートナーとなり、ソフトバンクや日産自動車とも提携しました。同年4月には、ライドシェア用電気自動車を共同開発する企業連合「洪流連盟」を立ち上げました。

しかし、2018年には、DiDiの運転手による殺人事件が相次ぎ、安全性の問題が深刻化しました。相乗りサービスが無期限休止となり、深夜営業も一時停止されました。また、2021年には個人情報無断収集問題により、アプリが中国国内のアプリストアから削除されました。

2022年には、インターネット安全法、データ安全法、個人情報保護法に違反したとして、80億2600万元の罰金を科されました。2023年7-9月期には黒字化を達成し、向こう2年間に10億ドル規模の自社株買いを行うことが発表されました。

サービス

DiDiは、タクシー、自家用車、指定ドライバーをスマートフォンを通じて雇用できるアプリケーションです。

中国400以上の都市で、タクシー配車、私用車配車、ヒッチ（相乗り）、お抱え運転手、バス、ミニバス、テストドライブ、カーレンタル、企業向けソリューション、高級車、自転車シェアリングなどのサービスを提供しています。

DiDiタクシー：380の中国都市で168万人のドライバーが営業。
DiDiエクスプレス：約400都市で運営、約200万人の乗客が毎日乗り合いサービスを利用。
DiDiヒッチ：ピーク時には都市間・市内間の乗車が毎日220万人に達する。
ショーファー：約200都市で営業。
企業向けソリューション：約3万社の法人顧客。
テストドライブ：主要自動車メーカー200社以上と協力。
カーレンタル：海外旅行者向けの自動車レンタルサービスを100ヶ国以上1500都市以上で展開。
DiDiバス：北京と深圳で開始。
DiDiミニバス：公共交通機関との接続を提供。

技術

人工知能（AI）：機械学習やコンピュータビジョンを含むAI技術に焦点を置く「DiDiリサーチ・インスティチュート」を設立し、派遣システムやルート計画を最適化。
ビッグデータ運用：1日に70TB以上のデータを生成し、90億以上のルート要求と130億以上の位置情報を処理。クラウドプラットフォームを構築し、交通需要と供給のバランスを効率的に調整。

従業員

DiDiは、様々な分野から優秀な人材を雇用しており、2016年5月時点で約5000人が勤務、平均年齢は26歳です。

リーダー

程維（チェン・ウェイ）：嘀嘀打車の創業者の一人で、2015年の合併以来、DiDiのCEOを務めています。アリババグループで8年間勤務経験があります。
柳青（リュウ・チン）：DiDiの社長で、ゴールドマン・サックス・アジアでの12年間の勤務経験があります。

CSR

環境保護：相乗りサービスを通じて、ガソリン消費量の削減と炭素排出量の削減に貢献。
雇用：1700万人以上の人々に柔軟で公平な雇用機会を提供。リストラされた労働者や退役軍人などの雇用を支援。
多様性：従業員の40%が女性で、女性キャリア開発計画や「DiDi女性ネットワーク」を設立。

栄誉

2015年：ダボス・グローバル・グロース・カンパニーズに選出。
2016年：フォーチュン誌の「Change the World」リストに選出。
2016年：MITテクノロジーレビューで世界で最も賢い企業50社に選出。
2016年：TechCrunchの第10回年間クランチアワードでベストスタートアップ５社にノミネート。

参考文献

DiDi公式ウェブサイト
DiDiモビリティジャパン