漢中府

漢中府（かんちゅうふ）は、中国の歴史において、明代から民国初年にかけて現在の陝西省漢中市一帯に設置されていた地方行政区画です。

歴史

1370年（明の洪武3年）、それまで興元路と呼ばれていた地域が漢中府と改称されました。この時、漢中府は陝西省に属し、直轄の県として南鄭、褒城、城固、洋、西郷、鳳、沔の7県と、寧羌州に属する略陽県、合計1州8県を管轄していました。この地域は、政治的にも経済的にも重要な拠点であり、交通の要所としても機能していました。

清代に入ると、漢中府の管轄範囲は若干変更されました。引き続き陝西省に属し、南鄭、褒城、城固、洋、西郷、鳳、沔、略陽の8県に加え、寧羌州、さらに仏坪庁、定遠庁、留壩庁という3つの庁を管轄しました。これにより、漢中府はより広範囲な地域を統括する行政機関としての役割を担うようになりました。清代を通じて、漢中府は地域社会の安定と発展に大きく貢献しました。

しかし、清朝末期から中華民国初期にかけて、中国全体が大きな変革期を迎える中、漢中府もその歴史に終止符が打たれることになります。1913年、中華民国政府によって漢中府は廃止され、その行政機能は新たな制度へと移行しました。

行政区画

明代:
直属県：南鄭県、褒城県、城固県、洋県、西郷県、鳳県、沔県
寧羌州管轄：略陽県

清代:
直属県：南鄭県、褒城県、城固県、洋県、西郷県、鳳県、沔県、略陽県
州：寧羌州
* 庁：仏坪庁、定遠庁、留壩庁

漢中府は、その歴史を通じて、地域の政治、経済、文化の中心地としての役割を果たしました。明代から清代、そして中華民国初期にかけて、この地域の変遷を物語る重要な存在であったと言えるでしょう。その廃止後も、漢中府という名称は、この地域の歴史を語る上で欠かせないものとして、今もなお記憶されています。

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