漫画ブリッコ

漫画ブリッコ：ロリコン漫画誌からサブカルチャーの震源地へ

『漫画ブリッコ』は、1982年から1986年まで白夜書房（後にコアマガジン）から発行されていたロリコン漫画雑誌です。当初はエロ劇画雑誌として創刊されましたが、編集体制の変更を経て美少女コミック誌へと大胆な路線変更を行い、サブカルチャー史にその名を刻むことになります。

創刊と路線変更

1982年9月、松田聖子の愛称「ぶりっ子」にちなんで名付けられた『漫画ブリッコ』は、A5判の平綴じ雑誌としてスタートしました。初期は三流劇画の復刻やアダルト劇画が中心で、南伸坊が表紙を手掛け、ヌードグラビアも掲載されていました。しかし、販売不振から半年後の1983年5月号で、大塚英志と小形克宏を編集長に迎え、「夢見る男の子のための美少女コミック誌!!」として生まれ変わります。

石井隆や富田茂といったハードな作風の作家に代わり、飯田耕一郎、中田雅喜、火野妖子、五藤加純、沢木あかね、大原彩生といったソフトな絵柄の作家が起用されました。さらに、洋森しのぶ（後のひろもりしのぶ・みやすのんき）や寄生虫（増田晴彦）、藤原カムイなど、若手作家の発掘にも力を注ぎました。岡崎京子の商業誌デビュー作『ひっばあじん倶楽部』や、白倉由美の初登場など、女性作家の台頭もこの時期の特徴です。

「おたく」の誕生とサブカルチャーへの影響

『漫画ブリッコ』は、単なるロリコン漫画誌としてだけでなく、サブカルチャーの隆盛にも大きく貢献しました。1983年6月号から中森明夫によるコラム「『おたく』の研究」が連載され、コミックマーケットに集まるマニアを「おたく」と名付けた最初の文章が掲載されました。このコラムは大きな反響を呼び、「おたく」という言葉は社会に浸透していきました。

大塚英志は、ロリコン雑誌から少女漫画志向への転換を試みましたが、経営陣の反発により頓挫。その後、大塚は白夜書房を離れましたが、『漫画ブリッコ』で培ったノウハウは、その後の活動に活かされました。

廃刊とその後

1986年2月号をもって『漫画ブリッコ』は廃刊となりますが、その精神は斎藤O子が編集長を務める後継誌『漫画ホットミルク』に引き継がれました。2年半という短い期間でしたが、『漫画ブリッコ』は谷口敬、藤原カムイ、岡崎京子など、数多くの漫画家を輩出し、サブカルチャー史に大きな足跡を残しました。

『漫画ブリッコ』が生み出した才能たち

ロリコン・美少女系
谷口敬
藤原カムイ
中島史雄
みやすのんき
かがみあきら

女流非少女漫画系
岡崎京子
白倉由美
桜沢エリカ
中田雅喜

その他
大塚英志
中森明夫
小形克宏
* 斎藤礼子

これらの作家たちは、『漫画ブリッコ』での経験を活かし、それぞれの分野で活躍しています。

『漫画ブリッコ』は、ロリコン漫画というジャンルを超え、サブカルチャーの可能性を切り開いた雑誌として、その名を語り継がれるでしょう。

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