潁原退蔵

穎原退蔵：近世文学研究の礎を築いた学者

穎原退蔵（えばら たいぞう、1894年2月1日-1948年8月30日）は、近世日本の文学、とりわけ俳諧の歴史研究において顕著な功績を残した国文学者です。1947年には文学博士の学位を取得するなど、その学識は高く評価されていました。

生涯と学問への道

長崎県に生まれた穎原は、東京高等師範学校国語漢文学科を卒業後、京都帝国大学に進学。同大学院を経て、1931年には京都帝国大学助教授に就任します。しかし、1936年には病気のため依願免官を余儀なくされます。

その後、1945年には京都帝国大学文学部講師として教壇に復帰。並行して同志社大学でも講師を務めるなど、教育者として精力的に活動しました。1947年には念願の文学博士の学位を取得、学界における地位を確固たるものとします。

1948年には関西大学員外教授に就任。さらに同年8月には、かつて務めた京都帝国大学助教授の職に再び就きます。しかし、そのわずか数日後、1948年8月30日に惜しまれつつも逝去。死去したその日に、京都大学教授に昇進するという異例の経歴を辿りました。

没後も色褪せない業績

穎原の没後、彼の研究成果は日本の国文学研究に多大な影響を与え続けました。特に近世俳諧史研究における彼の貢献は高く評価され、現在でも多くの研究者から引用されています。

さらに、穎原が編纂に携わった『江戸時代語辞典』（2008年刊行）は、2009年に第63回毎日出版文化賞を受賞。これは、彼の研究の価値と影響力が、没後もなお広く認められていることの証左と言えるでしょう。

家族と周辺

穎原の次女である穎原雅子は、同じく国文学者である尾形仂の夫人として知られています。このことから、穎原家と尾形家には、学問を通じた深い繋がりがあったことが窺えます。

まとめ

穎原退蔵は、病気による中断を乗り越え、旺盛な研究活動と教育活動で日本の国文学研究に貢献しました。彼の業績は、近世文学、特に俳諧史研究において重要な位置を占め、後世の研究者たちに多大な影響を与え続けています。没後も高く評価されている『江戸時代語辞典』は、その代表的な成果と言えるでしょう。穎原退蔵の生涯は、学問への情熱と、たゆまぬ努力の大切さを私たちに教えてくれます。

もう一度検索